2.榛名山のぼれ
榛名山の榛名湖は私たちにとって思い出の場所だ。
湖際の、そう賑やかな一角とは少し離れた
榛名湖温泉のある辺り。
あそこに私たちのお気に入りの宿があって、夏を除き春に秋に冬に・・・去年の3月まで11回も通ったのだ。
まだ二年も過ぎていないのか。
まるでずっと昔のことのようだ。
窓から見る鏡のように凪いだ榛名湖。
雪を被った湖畔の木々。
朝の冷たい空気の中、鳥の声を追って散策したこと。
階段のところにかまくらを作ったり滑り台を作ったりして遊んだこと。
子供たちがよく遊んでいた和室やキッチン横のカウンター。
ロビーの甘酒。
スノーキャンドル。
あれからしばらくは、もう榛名山には登るまいと思っていた。
悲しくなるから。
私たちは榛名山の東面をまずは
伊香保目指して登り始めた。
今年の遅い紅葉は、ちょうど麓から伊香保辺りまで鮮やかに目を楽しませてくれた。
伊香保は水道水疑惑以来、すっかり信頼を失っている。
少しは活気を取り戻したろうか。
榛名湖の宿同様の経営であった伊香保の宿は、私たちも一度泊まったことがある。
榛名湖の宿とともに売りに出され、榛名湖の方は榛名町が買い取ったものの伊香保はついに買い手が付かなかったと聞いている。
通りすがりにちらりと見てみたら、入り口にはガムテープが貼られ使われている様子はまったく無かった。
歴史ある伊香保の本線(金泉)を引いている宿だったのに・・・。
途中の展望台で少し写真を撮り、それから見慣れた道をさらに登る。
キャンプ場の入り口を過ぎて突き当たりを右へ。
ああ、何度この道を通ったことか。
車を停めてパパが言った。
「カナ、レナ、覚えてる?」