3.思い出の湖の見えるおうち
もしかしたらレナなんて覚えていないんじゃないかと思っていた。
だけど車を降りたレナは、懐かしい湖の見えるおうちの前でいきなり泣き出してしまった。
「どうしてもうここに入れないの?」とレナ。
「夜になるとエレベーターが止まっちゃってお風呂から部屋に戻れなくなっちゃうんだよね」とカナ。
そうだよね。二人ともしっかり覚えてるんだね。
寒空の下、金曜日の泊まり客はいないのか、門は固く閉ざされていた。
たぶん今日の午後になれば週末を過ごす客がチェックインするのだろう。
湖の見えるおうちの隣に立つ紅葉はまさに見頃で、じっと見つめているとぼんやりとにじんできた。
もうここに泊まることは無い。
たぶんね。