12.何故、外湯には鍵が掛けられたのか
入り口のドアに手を掛けて、張り紙をしげしげと見る。
11月14日は湯けぶりウォークのため、午後二時まで元湯を開放します・・・とある。
午後二時まで・・・
二時までだとー?
もう三時近いじゃないか。外湯開放は三時までって聞いたぞ。
ちょっとー、さっきの
湯田中大湯みたいに鍵がかかっていたら泣くぞ。
ドアを押す・・・開いた。
ほーっ。
また山ノ内町役場に電話しなくちゃならないかと思ったよ。
脱衣所は結構広い。浴室を見ると地元の方が沢山入っている。
とにかくあちこちに鍵の保管を厳重にするようにと即す張り紙がある。不正に使用された鍵のナンバーを地区ごとに記載するスペースまである。これはまた厳しいな。
挨拶をして浴室に入ると、これまた強烈に熱い湯が待っていた。
昨日の
安代大湯より熱いかもしれない。
でもみんな地元の人は顔色も変えずに入っている。さあ、自分も入ってみようか。
ざぶざぶと掛け湯をして、そーっと足先から入る。
うーん、熱い。
気の抜けていた体に活を入れるようなお湯だ。
黒御影石の湯船の縁から、絶えず掛け流されていく。
昨日今日と入った昆布出汁系の臭いではなく、ここは土臭い臭いがする。湯口ではそれに加えて薄いゆで卵系の臭いも。肌触りもきしつく。かなり安代や湯田中とは違う感じだ。羽毛状の湯の花が少し。とてもよく温まる。
上がって、少し地元の方たちと話をさせていただいた。
元々はこの辺りの温泉地はどこも鍵などつけずに外湯を開放していたという。それが今のようなシステムになってしまったのは、防犯上の理由だったそうだ。
地元の方たちが自由な時間に入れるよう、外湯は夜も開いている。
管理人も常駐せず、鍵が付いていない外湯でどういうことが起こるか。不届き者が後を絶たず、あちらの外湯では扇風機が盗まれた、こちらの外湯では鏡が剥がされて持って行かれた・・・そんなことがしばしば起きたのだそうだ。
どうしてそんなことをする人たちがいるのだろう。
本当に扇風機が欲しかったのか。
私はそうは思わない。
古びた扇風機など危険を冒してまでほしがる人がそんなにいるとは思えない。
公園のベンチや橋に落書きをするのと一緒で、タダなら、公共の場所なら何をしてもいい、どうせタダなんだからと思うろくでなしが、少なからずいたのだと思う。
タダで使わせていただけることに感謝こそすれ、もうこうなると、マナー違反の問題ではなく犯罪である。
そうして鍵がつけられ、やがて客の囲い込みが始まる。身を寄せ合うように固まった温泉地だからこそ、ひとつが鍵をつけて宿泊客以外閉め出せば、我も我もと同じことをせざるを得ないのだろう。
宿泊客だけに鍵を貸し出せば、宿を営む者たちにとっては外湯も旅館のサービスの一つと、良い宣伝になる。一石二鳥だ。
今度は穂波に泊まっていきなよという地元の方たちと別れを告げ、複雑な気持ちで安代への帰途についた。
午前中、多くの人たちで賑わっていたやまびこ広場を横目に見ながら、帰り道は遠いなとため息をついた。
思えば湯けぶりウォークラリーで3キロ、さらに解けなかった回答を探してもう一周でプラス3キロ、その上、
湯田中、
穂波と廻って推定3キロ追加、計9キロの道程に足はもうくたくただ。
これじゃ、湯けぶりウォーク、セカンドステージだよ。