8.安代館にアーリーチェックイン
安代館は立派な木造の三階建てで、渋温泉界隈ではこのクラスの古さは珍しくないのかもしれないが、さっきの酒蔵同様100年経過しているとという明治時代の建物は貫禄があった。
ただ、手入れについてはどうしても行き届かないところがあるように見受けられる。それはもう仕方ないことなのだろう。
植え込みのところを掃除していたのが大女将さんだった。
いくら何でもチェックインにはまだ早いだろうと思っていたのだが、快く部屋へ案内してもらえた。
うん、好印象。
部屋は古びているが非常に広々として、何より驚いたのは部屋の中に枯山水風の一角があったこと。岩がある部屋に案内してもらったのは初めてだなぁ。
中央には炬燵。
炬燵使用料はオプション料金だったが、11月の渋温泉郷は寒かろうと頼んでおいて正解らしい。
お風呂は二ヶ所、竜宮風呂と古代風呂とそれぞれ名前が付けられている。廊下に「貸切家族風呂」の表示もあったが、こちらは仲居さんに伺うと、古くて今は使っていないということだった。
何故か廊下に朱塗りの太鼓橋があったり、トイレの天井が傘天井になっていたりする。
とにかく重厚で歴史を感じさせる猛烈に凝った部分と、合板のはがれかけた壁やガムテープで修繕したドアなど妙に安っぽい部分が同居していて、何となく哀愁を感じさせる宿なのだ。
たぶん昔は高級な旅館だったのだろう。
全てに手を入れて、古い部分は歴史を感じさせながらもリニューアルして、安っぽい部分を全て消し去るには相当の予算が必要で、そのためには宿泊料を今の数倍に上げなくてはならなくて、しかし今のままで数倍にあげても客が来ないだろうから、結局ぎりぎりで現状維持をするしかないのだろうなという感じだ。
安代温泉は渋温泉の隣だが、渋温泉ではないので渋の九湯ある外湯には入れない。
そのかわり、安代には安代の外湯が二つある。
安代大湯と
開花湯。
しかし仲居さんに聞くと、大湯は安代館の目の前だが、もう一つの外湯なんてあるの?という。
ええっ、無いの? おっかしいなー。