お風呂はそんなに大きくなかった。
入り口のレトロさからすると、外に面した壁が一面ガラス張りになっている採光の良い浴室は、建物からすると浮いている気がした。
窓の外の景色も含めて、場所の割に秘湯っぽさの無いところが違和感。
でも浴槽そのものは岩風呂で、湯口付近からその周辺まで温泉成分で色が変わっていたりして年季が入っている。
窓際にすずりのような形のお風呂がもう一つあって、そちらは寝湯のようだった。
お湯は南国の海の色。
外の混浴露天風呂と同様、硫黄成分でお湯に触れる浴槽部分が真っ白になって、そこに透明水色のお湯が入って光が差すと、本当に綺麗な色になる。
すごく熱いのかなと思ったが、むしろあっさりとぬるめ。
白い湯の花がひらひらとお湯の中を漂っているが、中には陶器のように固いものもあり、それは析出物が浴槽に張り付いて剥がれた部分らしい。
強烈だった小赤沢温泉の鉄のにおいがしばらく肌から取れなかったが、しばらくこの屋敷温泉に入っていると、今度はふんわりと硫黄系のマッチのようなにおいで上書きされる。
味は苦みのある塩の薄いゆでたまごみたいな感じ。
肌ざわりはきしつきが強い。
体が軽くなるようないい感じのお風呂。
ところで上がる頃になってなんでこのお風呂がぬるいかわかった。
湯口の上に岩で湯だまりになっているところがあって、そこにバルブが沈んでいた。
最初から源泉に加水されてぬるくなったものが浴槽に注がれていたのだ。
ためしに水をちょっと絞ってみると、だんだんとお風呂の中が熱くなってきた。
ちなみにすずりみたいな寝湯の方は最初から熱湯だった。
正直入れない。
えんぴつさんがしばらく湯もみしてみたが、やっぱり入る気になれないほど熱いままだった。
岩風呂の方も水を完全に止めてしまったら、寝湯みたいになるのだろう。