子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★★☆☆ 泉質★★★★☆ 温度は適温、塩分が強いため長湯に注意
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★☆ 濁り湯で深さが判りにくいので注意、脱衣所にベンチあり
子連れ家族のための温泉ポイント
思ったよりずっと天気が良く、薄く紗を掛けた白い雲が少しあるがほぼ青空。
秋山郷は中津川渓谷に沿って伸びる国道405号線を生命線として両側を山に挟まれた谷間に伸びる集落の総称だ。
津南から逆巻、結東などを経て大赤沢のあたりまでが新潟県津南町。
その先小赤沢、屋敷、和山、最奥の切明までは長野県栄村となる。
冬季閉鎖で不安定な林道が二本ほどあるにはあるが、小赤沢から先のエリアは、基本的には新潟県を通らないと他の長野県の土地に出られないような立地で、何故ここが新潟じゃなくて長野になっているのか不思議に思っていたほどだ。
途中途中に石切り場、大型の宿泊施設や特産品を売る小さなショップなどは見えたが、だんだんと辺りの景色は秘境らしくなってきて、昨夜の問答を思い出し、ここで生活する人は何を思ってこの地を選んだんだろうとそんなことを考えさせられた。
雪で雑魚川林道がまだ閉鎖されているとは言っても、山の上の雪はほとんど融けている。この季節だからまだいいけど、冬は本当に移動するのも大変なはずだ。
雪深い土地の苦労についてはこの栄村からも近い飯山出身の母から私は時々聞かされて育った。
車が停まったのは小赤沢温泉 楽養館。昨夜、ここに連れてきてくれた温泉に詳しい友人たちが、インパクトのあるお湯、ただし、これが秋山郷でイメージする一般的なタイプのお湯だと思っちゃいけない、むしろここだけ特殊だと思った方がいいと言っていた温泉。
ぐるりと外壁に秋山郷の四季をプリントしたパネルが貼られていて、そこがちょっと山の中の温泉と言うより安っぽい観光地みたいに見えちゃって残念。
よく見ると建物はいい感じの木造で、屋根だけが高級感なくぴかぴか光っちゃっているが、鋭角に突き出したつやつやの屋根の形は雪を滑り落とさせる世界遺産の合掌造り風で、秋山郷が日本有数の豪雪地帯であることを思わせる。
その山小屋みたいな三角屋根の建物が受付兼食堂になっていて、お風呂はそこから渡り廊下で繋がった別棟。
屋根のかかった渡り廊下は、ちょうど道路に面しているのとは逆の方向の窓が日よけで隠されているが、その隙間を覗き込むと、まるでアルプスの少女ハイジの背景みたいな夏山と緑の野の光景が広がっていた。
浴室の前には狭いスペースを利用した屋根裏みたいな休憩場所があり、やけにそのあたりの畳や板張りの床や壁は新しく綺麗だ。
脱衣所は広くないが、籠の置き方など洒落ている。籠もプラスチックではなく藤製。
脱衣所の隣に涼めるようにベンチを置いてある場所があるが、そこからは、さっき渡り廊下で見たあの景色が見えるようになっている。
浴室前や脱衣所と比較すると浴室内は年季が入って見えた。
もしかしたらそれは、お湯の成分であちらこちら錆びのような土が固まったような赤茶色に染まっていることによってそう見えるだけかもしれない。
とにかくお湯の色はインパクトが強い。
泥を溶かしたような濃いオレンジ色。
しかも湯口から離れてお湯が滞っているあたりは泥の塊のような泡や、油膜のようなものが表面を覆っていて、これまた強烈な見た目だなとわくわくしてくる。
浴槽は大小二つ。
小さい方は寝湯となっていて溢れたお湯が流れ込む作り。
温度はちょうどいいくらいかな。熱すぎずぬるすぎず。
湯口の近くに行くと鉄のにおいが強い。湯口は間欠泉のように時々シューシューぼこぼこと唸っていて、湯口自体は水道の蛇口のように管が下を向いていて、ちょうどお湯の表面にぎりぎりつくかつかないかなんだけど、お湯が出ている時はお湯とともに炭酸が飛び散るように飛沫になっているのが横から見える。
ものすごい濁り湯なので中は見えないけど、透明だったらアワアワに見えるのかも。
あっ、またシュワー、ピシピシと飛び散っている。ツンと鼻に刺激が来る。
ちょっと味見してみると鉄、塩、にがりという感じ。
お湯の表面を覆っているのは鹿児島のTM牧場温泉で見たようなカルシウムの結晶。
厚みがあって硬いものと、羽衣みたいにごく薄く儚いものと二種類浮いている。
これをさくさくっと壊しながら入るのもまた楽しい。指ですりつぶしてみたり。
ここはお湯も印象的だけど建物もいい。力強く使い込まれた古びた感じに中に、モダンで洒落たところがある。
古い木造校舎をモノクロの写真でかっこよく撮りました的な。
これは一度は入りたい温泉かも。
小赤沢に入っただけで秋山郷を語るべからず、小赤沢は秋山郷の入り口、本当の秋山郷は小赤沢から先って言うけれども、でもここに入っただけで満足しちゃいそう。やばいやばい。