バス通りに出ると今まで歩いてきた高低差のある狭い路地とは雰囲気が変わる。
遠くに山が見えると思いながら、道としてはあまり面白味のないそこを中心部に向かっててくてく歩く。
観光案内所の前を通り過ぎるとき、確か横落の湯はこの辺だったなときょろきょろしてしまった。
他の外湯と違って、店舗と兼用の建物じゃなかったっけ。
ふと見ると正面から義満さんがこちらに向かって歩いて来るのが見えた。おはようございますと手を振って挨拶する。
義満さんはこれから新田の湯の方へ向かうそうだ。
私は横落の湯に寄っていきますと別々の方角へ別れる。
で、横落の湯はどこだっけ。野沢温泉観光案内所の隣ぐらいじゃなかったっけ?
はたして横落の湯は角を曲がってすぐの半地下にあった。
前に来た時はここも観光客が何人かいてあまりゆっくりできなかった記憶が。
旅館街ではないけれど、観光案内所やバスターミナルや飲食店が並ぶ中心地にあって、便利な立地だからか割と混んでいるイメージが強い。
ここのお風呂は円形だ。
陶器の昭和な感じのタイルではなく、大きめの石のタイルを壁にも浴槽にも使っている所が、何となく野沢温泉の外湯の中ではひときわ洋風な雰囲気だ。
熱いけど熱すぎない。強制的に水が足されているのか、ほぼ適温といってよい。
源泉はさっき入ったばかりの新田の湯と一緒。
すっきり綺麗な無色透明なお湯。
肌触りはするすると滑る感じが強い。においはマッチ臭。湯の花は探せばやっと見つかるぐらいにごくわずか。
一人で入っていると地元の人らしいお姉さんが入ってきた。
マッチのにおいに混じってシャンプーのフローラルな香りがほわほわと湯気と一緒に漂ってきた。