3.元湯 鹿の湯
タオルを手に小走りで入り口へ向かうと、他にも走って来るおじさんがいたり、新たに車を停めようとするカップルがいたりで、本当にこの駐車場は
鹿の湯の客で全部なんだと改めて思わされた。
受付で料金を払う。
風呂場は左手。
外からも見えたように、川の上に渡された橋状の渡り廊下を通っていくことになる。
脱衣所は浴室と繋がっているタイプ。
共同浴場でよく見かける作りだ。
畳スリッパがいくつか脱いである。あれ? スリッパなんてあったっけ。私は靴下のまま、ここまで来ちゃったよ。
脱衣棚のあるスペースの両側に浴槽がある。
片方は長方形の浴槽がひとつで、洗い場になっているらしい。
もう片方がメインの浴室だ。四つほど四角い木の浴槽が並んでいて、全部温度が変えてあるらしい。
驚いたのは、まだ営業時間になって数分しか過ぎていないはずなのに、何故か入浴客は全員既にずいぶん前から入っているような顔をしていたことだ。
それに人数多すぎ。
四つ並んだ浴槽の奥に階段があって、そこを降りると大きな浴槽がひとつあった。
その全部にえーと・・・一人、二人、三人・・・
さ、三十五人!?
三十五人も入っているの!?
なんで朝から三十五人も入っているの?
それにみんないったい何時から入っているの?
絶対8時ちょうどに来て、それから脱いで入ったばかりとはとうてい思えない。
だってほら、みんな既にある程度温まって、お湯から上がって床でくつろいでいるみたいだよ。お風呂に入っている人の方が少ないもの。
とりあえず階段下の大きなお風呂と、44度のちょっと熱めのお風呂に入ってみた。
雲海閣のお湯より若い気がする。
臭いが雲海閣より薬っぽい。味にももっと酸味を感じる。
しかしこうも混んでいると落ち着かないねぇ。
お湯はやっぱり鹿の湯の方がいいが、もう少し角の取れて丸くなった源泉を、のんびりゆっくり独り占めできる雲海閣の方が快適度はずっと高いな。
時間がないのでさっと入ってさっと上がった。
湯上がりはさわやかだし、よく温まっていて寒気は感じなかった。
帰りがけに受付で聞いてみた。
「本当に8時オープンなんですか?」
「うーんまぁ、準備が出来次第開けるねぇ。いつも10分ぐらい前には開いているよ」
やっぱり!!