子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★☆☆ 階下の硫黄泉は熱めで刺激も、明礬泉はそれよりは子供でも入りやすい
- 設備★★★☆☆ 雰囲気★★★★☆ 硫黄泉は濁り湯で底が見えないので子連れは注意
子連れ家族のための温泉ポイント
いろいろなところを旅していると、時々、ああここは「当たり」だ、叶うことならまた、ここに来てここに泊まりたいと思う宿に巡り会うことがある。
それにはまあ、いろいろな条件があって、居心地がよいとか、相性がいいとか、お風呂が素晴らしいとかそういうものも当然あるのだが、やはり「人」が良いことが一番だろうか。
心がこもっているかこもっていないかというのは、自ずから判ってしまうものだと思う。
雲海閣は那須湯本温泉のメインストリートに面してはいるのだが、街道沿いの入り口は今は使っておらず、旅館清水屋の前を曲がるか、鹿の足湯の先を曲がって、坂を降りないと正面玄関には着くことが出来ない。
客室は斜面の上の見晴らしの良いところに、そして浴室は上と下とに二ヶ所ある。
上の浴室は湯の花舞う透明な明礬泉、下の浴室は元湯鹿の湯と同じ白濁した硫黄泉が引かれている。
古びた館内に入り、階段を何段か下りると、天井に表示が出ている。右手に明礬泉、階段のさらに下には硫黄泉があると木の板に書かれている。
まずは階下の硫黄泉から案内しよう。
数段の階段の下には何やら簀の子を敷いた四角い細長い通路が続いている。
白っぽい塗料を塗ってある壁は、あちらこちら剥がれて剥き出しのコンクリがのぞいており、殺伐とした雰囲気だ。
この奥にさらに長い長い階段が続いている。
ここは先ほどまでの白い通路とはうってかわって壁も天井も階段も手すりも全て木組みだ。
階段を一番下まで下りると、右手に女湯、左手に男湯がある。
女湯の先は、部屋と言うより何か休憩室のようなものでもあるのか、スリッパが何組か散乱していた。
女湯の暖簾を潜ると、横に細長い小さな脱衣所。
がらがらと戸を引くと、何とも絵になるお風呂が待っていた。
浴室は天井も浴槽も全て飴色に染まった木でできていて、二つの隣り合った四角い浴槽には青白い濁り湯が静かにそそがれている。
湯口も木でできていて、そこだけちょっと周りから浮いたオレンジ色の金槌が置いてある。これは湯量調節用だ。
浴槽の縁も洗い場の床も、硫黄の粉で白っぽくなっていて、隅に黄色いケロリン桶が備え付けてあった。
並んでいる二つの浴槽のうち、右が適温、左側が熱くなっていた。
青白い濁り。
この宿に一歩足を踏み入れたとたん、何処からともなく漂ってくる硫黄の臭いに、ああ温泉宿だぁという気分が高まるが、お風呂に入ってみると、硫黄の臭いよりむしろアルミニウムのような金属臭が強く感じられる。そして酸っぱいような臭いも。
鳴子の滝の湯に少し似ているかな。
ぬるい方で体を慣らして、熱い方に移ってみた。
足先からじんじんと温まる。
高い木の天井に湯気が上がっていく。
味には思ったほどの酸味はなく、むしろ粉っぽい舌触りが印象に残る。
再び階段を上り、今度は明礬泉へ行ってみよう。
階段の途中で表示に従って曲がると、いきなり薄暗い簀の子を敷いた洗面所のような場所に出た。
簀の子なのでこの手前でスリッパを脱いだものか迷う。
手前は男湯(すぐ上の左の画像)、奥が女湯(同じく右の画像)。男湯の方がかなり広い。
浴槽は円を1/4に切った形をしていて、タイル張り。
狭く年季も入っているが、なかなかいい感じのお風呂だ。
無色透明に見えたが、入ってみると粉状の湯の花がうっすらと舞っていた。
臭いは浴室に入った瞬間は汚水のような臭いを感じたが、やはり硫黄の臭い。
適温。
階下の硫黄泉ほどのインパクトはないが、これもとても良い湯だ。
湯口の下に行くと、底に沢山湯の花が沈んでいた。
思わず嬉しくてすくってはお湯の中で舞わせてみる。
パンを焼くために粉をふるった後のように一面真っ白になった。
湯上がりは何故かどっかりと疲れて動けなくなる。
肌もべたべたする感じ。
爽快感を感じる下のお風呂とは対照的だ。
登らなくてはいけない階段はこっちの方が少ないのに、立ち上がるのに気合いがいるのはこちらのお風呂の方だった。
雲海閣は以前は15室の客室に二食付きの宿泊を受けていたが、今は9室のみ、素泊まりと立ち寄り入浴のみの受付となっている。
素泊まりと言っても自炊は可能だ。調理器具や食器もみんな貸してもらえる。
はじめに電話したときに、「古ーい宿ですが構いませんか?」と聞かれた。
確かに建物は古いのだが、古いことは決して悪いことではないのだ。
私はまたきっと、雲海閣を訪れるだろう。