21.青白い濁り湯で一休み
宿に戻ると、子供たちはまだ小部屋に籠もってごそごそやっていた。
部屋の入り口にはバービーたちが三体ほど並び、めいめい手に「うらないハウス」などと書かれた紙を持っている。
パパは明日の天気を占ってもらっていたが、やはりうやむやのうちにごまかされてしまったようだ。
「
喜楽旅館は思いっきりB級の臭いが漂っていた」
「そんなところへ行きたがるやつの気が知れない」
私が喜楽旅館に行っている間に、パパは
雲海閣のもう一つのお風呂、明礬泉に子供たちと入ってきたという。
「今度はここのお風呂も入ってきたら?」
じゃあお言葉に甘えて・・・
最初はやっぱり階段下の硫黄泉だろう。
ほくほくとタオルを手に階段を下りる。
硫黄泉の女湯には今は二人ほど先客が入っているようだ。
「失礼します・・・」
並んでいる二つの浴槽のうち、右が適温、左側が熱くなっていた。
青白い濁り。
この宿に一歩足を踏み入れたとたん、何処からともなく漂ってくる硫黄の臭いに、ああ温泉宿だぁという気分が高まるが、お風呂に入ってみると、硫黄の臭いよりむしろアルミニウムのような金属臭が強く感じられる。そして酸っぱいような臭いも。
鳴子の滝の湯に少し似ているかな。
ぬるい方で体を慣らして、熱い方に移ってみた。
足先からじんじんと温まる。
高い木の天井に湯気が上がっていく。
味には思ったほどの酸味はなく、むしろ粉っぽい舌触りが印象に残る。
さきほど喜楽旅館でゆっくり入ってきたところだから、そんなに長湯は出来なかったが、私より先に入っていた二人のご婦人は、私が出てもまだ木の床に座ったまま動こうとはしなかった。
湯上がりの気分はさっぱりしゃっきり。
高揚していたので帰りの長い登り段も別に苦にはならなかった。