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鳴子温泉巡り旅

21.早寝パパと夜更かしキッズ






 暗い夜道を黒いハマーでヘッドライトの灯りを頼りに上り進んでいくと、後ろからサイレンの音が近づいてきた。
 救急車だ。
 この山道の上にあるのは鬼首の小さな集落と宿とキャンプ場ぐらい。
 まさかと思うけど子どもたちが怪我をしたとかパパたちが飲み過ぎて急性アル中になったとか、そんなことがあったらどうしようと一瞬心配してしまった。
 九十九折りの山道を救急車は追い抜いていき、驚くようなスピードで走り去ってしまった。
 さすがは地元の運転手・・・。ドライビングテクに自信有りのくららさんでもあっと言う間に見失うほどだった。
 キャンプ場につくと救急車の気配は無かったから、途中のどこかの宿の方へ折れたのではないかと思われる。山の中だと救急車の到着にも時間が掛かるだろうから、いざと言うときは気をつけなくてはいけない。


山伏接待の一升瓶・・・もう空っぽだけど



 パパはかんかんで待っていた。
 「怒ってる? ねぇ、怒ってる?」
 しかし周りに座っているデビさんや益子さんはにやにやするばかり。
 「大丈夫、彼は全然怒ってないよ」
 ほ、ほんとう~?
 「とりあえず子どもたちをお風呂に連れていこうか? えーと、キャンプ場のすぱ鬼首の湯は今日は7時半までだっけ?」
 「もう7時を過ぎているんだから間に合うわけないだろ!! だから6時には帰ってこいって言ったんだよ!!」
 ひー、やっぱり怒ってる。
 「いいよいいよ子どもたちは一日ぐらいお風呂に入らなくても」とデビさんが言う。
 念のためトレーラーの中で遊んでいた子どもたちにお風呂に行くか聞いてみたが、ゲーム機で遊ぶのに夢中の三人は、「行きたくな~い」と振り向きもせず答えてきた。
 あれ? 足下に何かある。
 宴会場とくららさんたちが呼ぶ大きなドーム型のタープの中で、持ち寄ったアウトドア用の椅子に腰を下ろすと足に何か固いものが当たった。
 持ち上げてみたら空ビンだった。確か飯坂温泉街の酒屋で買ったばかりの山伏接待の一升瓶・・・もう空にしちゃったの?
 「まさかこれ全部飲んだの?」
 「え?」完璧にしらばっくれている。
 「飯坂の酒屋さんがこれが美味しいって勧めてくれたやつでしょ? 私まだ一口も飲んでなかったのに・・・遅くなったこと許してくれたら、一升瓶全部飲んじゃったことも許して上げる」
 パパは渋面。それでも態度は軟化してきた。少しは飲み過ぎた自覚があるみたいだ。

 それから牡蠣とかホタテとかを炭で焙った。
 一つずつじゃちょっと少なかったかなと思ったが、どちらも大ぶりで肉厚、味は最高だったので良しとしよう。
 益子さんはとても温泉に詳しい人で、今夜はこのキャンプ場に泊まって行くが明日は予定通り朝早く出発して青森に向けて北上するという。
 八九郎、奥八九郎、奥々八九郎の有名な野湯三兄弟温泉、また既に旅館は廃業して廃墟にお湯のみが溢れている田代元湯の話など聞かせてくれた。
 「田代元湯に入るには、まず全部湯を抜いて自分たちで清掃するんだよ、それから入るんだ。でもまもなくダムに沈んでしまうから行くなら今のうち」
 それから他にも、カメラを通した思い出にならないよう、カメラは持ち歩かない主義とか、興味深い話を沢山伺った。
 那須の老松温泉のしつけがなっていない民家の犬についても盛り上がり、デビさんから、赤城山のキャンプ場に行けば野犬が群になって歩いているよと吃驚するような話も聞いた。







 気がつくとパパがいない。
 さっきから海産物を焼くときだけ現れてはふらりと炭の世話をして、またいつの間にか消えている。
 もう牡蠣もホタテも終わってしまったのでしばらく姿を見ていない。
 ・・・まさか。
 そーっとトレーラーの屋根の下に設置したミニテントを見に行くと、入り口の前に揃えて脱いであるサンダル。
 中をのぞくまでもない。フライシート越しに聞こえるのは規則正しいいびき。
 一昨日まで残業続きだったし昨日今日と運転して疲れているのは判るけど、寝るなら寝るで一言「お休みなさい」ぐらい言ってほしかったよ。
 まあいつものことだけどさ、キャンプ場で誰より早く寝ちゃうのは。

 パパとは逆にちっとも寝ようとしないのは子どもたちだった。
 お友達のまりなちゃんはいるし、ニンテンドーDS用のソフトもいっぱいある。さらに猫ちゃん二匹がトレーラー内をうろうろしていて楽しくて仕方ないようだ。
 トレーラーに近づくと、巨大な茶色い蛾が灯りの下を飛び回っていた。大人の手の平ぐらいのサイズがある。大きいので羽音がばさばさとすごい。子どもたちとくららさんを呼ぶと、くららさんは「コウモリかと思った」と吃驚していた。
 さていい加減子どもたちを寝かせようと、無理矢理着替えさせて歯を磨かせた。
 そしてキリの良いところで寝るようにと伝えてタープのところで大人だけで歓談していたのだが、何時まで経ってもトレーラーからときおり聞こえるドスン、バタンという騒音が止まない。
 「こらーっ、まだ寝てないの!」
 「レナちゃん泣いちゃった」
 まりなちゃんが立ったまま顔を伏せているレナを指さす。
 おいこら、ちょっと待てレナ。
 無理矢理レナの顔を上げさせるともう半分寝ている。
 あのね、立ったまま寝ないでよ。眠すぎるからぐずぐず言うんだよ、キミは。
 今度こそ子どもたちは布団の中に入った。
 くららさんがトレーラーの電気を消す。
 「おやすみ・・・」
 猫の四万吉くんが寄ってきてすりすりしてくれた。

3-1地獄に囲まれてる鬼首へ続く


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