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◆◇長崎旅行記◇◆
小浜温泉湯祭りとハウステンボス

9.島原半島へ













 ふと、さっき久原で降りて行った観光客のことを思い出した。
 また不安になり、走り出したばかりのバスの運転手のところへ移動する。
 「あのう、このバス、水月橋に停まりますか?」
 「すいげつきょう? 行かないよ」
 ・・・ええ~っ!!
 動転して言葉が出ない。
 ちゃんと調べたのに。
 バス、間違えたの? 取り返しがつかないよ。どうしよう。
 「すいげつきょうってどこ?」
 「く、口之津の少し手前で・・・」
 「あーあ」判ったと言うように運転手は言った。
 「すいげつばしね、すいげつばし。すいげつばしなら停まるよ。このバスで合ってる」
 心臓に悪い。悪すぎる。





 バスは諫早を出て、島原半島へ向かう。
 天草四朗の島原の乱で知られた島原半島は、長崎県の南東に、ちょうど胃袋のような形で繋がっているエリアで、中央に数年前に大噴火して死傷者を出した雲仙普賢岳があり、胃袋の外側の東岸には島原城のある島原が、内側の西岸にはオバマ大統領と名前が似ていると全国でも有名になった小浜温泉が、先端にはおよそ30分の船旅で熊本県に渡れる口之津港がある。
 半島内の交通は、島原城のある島原方面へは島鉄の鉄道が通っているが、後は全てバスを含む車ということになる。

 川を渡り、線路を渡りするうちに、町を抜け、いつしか車窓の景色は緑になっていた。
 時折黄色い菜の花が線路端で群れて咲いている。
 春らしい景色だ。

 バスの乗客のいくばくかは小浜温泉や口之津方面へ行く観光客かと思っていたが、町を抜ける前にぽつぽつと降車していき、いつの間にか車内の客は私たち親子だけになっていた。
 途中で乗ってくる人もちらほらいるが、長く乗る人はおらず、みんな数駅で降りて行ってしまう。

 胃袋の付け根である一番細くなっている辺りが愛野という場所だった。
 道は二手に分かれていて、右へ行けば小浜・口之津、左へ行けば島原だ。
 バスは右へ折れた。

 愛野から付け根を横断するまでは町の景色だが、やがて青い海が見えてくる。
 このころ車に酔いやすいレナは既に寝ていた。
 酔い止めを飲ませたとはいえ、今日明日のバス移動が一番きついと思っていたので、ここで寝てくれると助かる。


車窓からは海を




1-10まさかの大渋滞へ続く


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