6.妙高温泉の共同浴場
「ねえ、帰りに一ヶ所温泉に寄っていってもいい? 私一人で行ってくるからさ」
もう
和泉屋旅館のお風呂に入った後だから、パパと子どもたちは入りたがらないだろうと見越しての提案だ。
「どこ?」
「近いよ。高速に乗る手前。
妙高温泉の共同浴場なんだけど」
「・・・いいよ、一人で行ってくるなら」
やった。
ナビに大体の場所を入力して走り始めた。
関川の交差点で妙高高原駅方面に向けて曲がったが、思いのほか細い道だ。何となく温泉街とか駅前へ向かう道とかそんな雰囲気ではなく、田舎の住宅街のような感じだ。
道は真っ直ぐではなくカーブしていて、右手に人工の溜め池のようなものが見えた。
共同浴場はこの当たりだと思うのだがどこに車を停めてよいものか判らない。
溜め池を背にして細い路地を覗き込むと、いきなり大湯の看板が見えた。ああ、どうやらあれが共同浴場らしい。