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◇◆赤倉温泉◆◇
子連れスキーと温泉旅行

6.妙高温泉の共同浴場






 「ねえ、帰りに一ヶ所温泉に寄っていってもいい? 私一人で行ってくるからさ」
 もう和泉屋旅館のお風呂に入った後だから、パパと子どもたちは入りたがらないだろうと見越しての提案だ。
 「どこ?」
 「近いよ。高速に乗る手前。妙高温泉の共同浴場なんだけど」
 「・・・いいよ、一人で行ってくるなら」
 やった。

 ナビに大体の場所を入力して走り始めた。
 関川の交差点で妙高高原駅方面に向けて曲がったが、思いのほか細い道だ。何となく温泉街とか駅前へ向かう道とかそんな雰囲気ではなく、田舎の住宅街のような感じだ。
 道は真っ直ぐではなくカーブしていて、右手に人工の溜め池のようなものが見えた。
 共同浴場はこの当たりだと思うのだがどこに車を停めてよいものか判らない。
 溜め池を背にして細い路地を覗き込むと、いきなり大湯の看板が見えた。ああ、どうやらあれが共同浴場らしい。

住宅街の片隅に建つ関川共同浴場大湯



 思っていたほど小さな建物ではなかったが、路地にとけ込むように建っているので知らない人はなかなか見つけられないかもしれない。
 パパは駐車場を探すことを諦めて、この辺で適当に待っているからと言って私を降ろした。
 天然かけ流し温泉大湯と書かれた立派な木の看板の下を潜って中に入ると、すぐに受付があった。おじさんが一人で番をしている。
 「えーと・・・入浴券を買うんですね。自動販売機は・・・」
 「後ろですよ」
 振り向くと確かに後ろに自販機があった。年齢や共同体加入者であるか否かで細かく料金設定が別れている。
 といっても一般の通りすがり客でも一人200円。申し訳なく思うくらいに安い。

 男湯が手前、女湯が奥。
 入り口にどうぞ御ゆっくりと書かれた板が貼ってあって思わず顔がほころぶ。
 ドアの磨りガラス越しにいくつも人影が動いているのが見えたので、どうやら中は混んでいるようだ。
 「失礼しまーす」
 脱衣所は思った通りおばあちゃんたちでいっぱいだった。
 私が隅でぬぎ始めると、比較的若い一人が近づいてきて脱衣棚の一番下を指した。
 「あそこに石鹸があるから使ってね」
 棚の下をのぞくとそれぞれデザインの違う石鹸箱が二つほど入っていた。
 「ありがとうございます」
 つい今し方赤倉で温泉に入ってしっかり洗ってきたばかりだから、掛け湯で入ればいいやと自分では思っていたが、確かにそんなことは他の人には判らない。同浴者に不快感を抱かせないためにももう一度しっかり洗おうと、教えて貰った石鹸箱を一つ持って浴室に入ることにした。





3-7また次の冬までへ続く


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