体も心もほかほかと温まって外に出ると、パパは共同浴場のすぐ近くに車を停めて待っていてくれた。
乗り込もうとすると、さっき脱衣所で話をしたおばちゃんの一人が横を通った。
車のナンバーをしげしげと見ている。
「おやまぁ、ずいぶん遠くから来たんだね」と驚いた顔。
「はい、東京から」
「それじゃお気をつけて」
おばちゃんが行ってしまってから、パパは「何を話していたの?」と聞いてきた。
「うん、お風呂で会った人。遠くから来たから吃驚したって」
こんな風な温泉が近くにあったらいいな。
スキー場に近いあの赤倉ですら時代から取り残されつつある今、
妙高温泉という場所自体、既にかなり寂れているのではないかと思うが、あの共同浴場はこのままであってほしい。
湯上がりの肌からは何だか甘いいい匂い。
バタバタいっていたアンテナは、結局コンビニを探してビニールテープを買い、応急手当した。
簡単に言うけれど、この小さな町でコンビニを探すのはそれなりに手間で、結構ぐるぐると路地を走り回った。
一度は食品を主に置いている個人商店のようなところにも入ってみたが置いていなかったので。
そして妙高温泉からは妙高高原ICまですぐ。
高速に乗ると、旅が終わってしまったような気がする。
さよなら新潟。
また次の冬まで。