8.いきなり上級者コース
結局3時半を回るまでゲレンデにいた。
まさかようやく滑れるようになったばかりの子供たちと一緒に、まるまる一日滑ることになるとは思っていなかった。
せいぜい休み休み半日強だろうとたかをくくっていた。
覚悟ができていなかった親二人は膝ががくがく。
ラスト、くまどーゲレンデに戻って一番上まで上がり、ファミリーコースからパノラマコースへと続く一番景色の良い中級者コースを一直線に下ろうとしたら、午前中一回だけ通ったラビットコースへ行きたいとカナが言い出した。
ファミリーコースから左へ入るとラビットコースへ抜ける細い道があるようだ。
このルートは初めてだ。
でもラビットコースはゲレンデが狭いから結構きついよ。
「いいの、ラビットコースに行きたい」
まあいいか、と許可したら、待っていたのはちょっとぎょっとする斜面だった。
こ、この接続ルートはやばいんじゃないか?
既に疲労が限界に来ているレナは、斜面に差し掛かってすぐに一回転して転び、足が交差してしまった。
何とかいったん板を外し、体制を整えさせる。
カナは・・・と下を見下ろすと、あれまあ、一気に一番下まで行って、そこでやっぱり転んで板が外れている。
そうは言ってもこの斜面を一気に下まで降りられたっていうのが凄いけど。
レナも何とか下まで降りた。怖がっている様子は無い。
カナは自力で起きあがった。
後でゲレンデマップを見たら、なんとこのコースはくまどーエリア唯一の上級者コースだった。
・・・昨日ちょこっとスクールで教えてもらったばかりなのに、もう君たちは上級者コースまで滑るのかい。
ゲレンデではまだ滑れる、もっと滑りたいと言い張っていた子供たちだが、板を担いで
和泉屋まで戻る途中で体力は限界、根を上げた。
特にレナはストックだけ運ばせても、それを杖代わりによろよろと歩くのみ。
あと少し、あと少しとだましだまし進ませた。
和泉屋の駐車場に停めさせてもらっていた車の所に戻ると、和泉屋の女将さんが出てきて、良かったらお風呂に入っていって下さいと仰ってくれた。
結局、子供たちが今はお風呂に入りたくないと言ったので、恐縮ながら辞退させてもらったが、こんな風に帰る客にも一声掛けてくれるその気持ちがとても嬉しかった。
特に和泉屋のお湯が気に入っているパパは、この粋な申し出にかなり未練があったと思う。
ついでにうっかりと部屋に忘れてきてしまったデジカメのケーブルとレナの玩具も見つけてくれた。