10.越後屋とムスタング
当てが外れてしまって、目的もなく温泉街を散策してみた。
みよしやの角で曲がると、温泉街のメインストリートに出た。
メインストリートと言っても、旅館はむしろ
和泉屋のあった通りの方が多い。
こちらは土産物屋や食事処が軒を連ねている感じだ。
パパは赤倉温泉は昭和で時間が止まっていると言う。
確かに微妙にくたびれた土産物屋や活気のない通りは、20年以上前で時間を止めてしまったようだ。
越後屋という土産物屋の前で温泉卵を売っていた。
「越後屋っていう名前が多いな」
「だってここ、越後だから」
「でも越後屋って言うと悪役のイメージだよな」
「悪代官の決まり文句だからねぇ」
一個買ってその場でかぶりつく。
半殺しキムチという名産品をつけて食べるようになっている。悪代官とキムチかぁ。
「社会状況により温泉卵は堅ゆでにさせていただいております。ご理解下さいませ」という張り紙がある。
衛生的な観点からとかではなくて、社会状況という表現に吹き出してしまった。