8.おいてけぼり
まつだいファミリースキー場の初心者キッズスクールでは、片足の板を外してバランスを取ることから始めていた。
だから最初の30分から1時間は、ほぼ平地でレッスンを進めていた。
今回も同じだろうと、パパは買い物に行ってしまった。
赤倉くまどースキー場のクワッド乗り場からゲレンデを見上げると、巾はあるものの昨日滑った湯の丸よりもずっと斜度のある中級者向けのコースになっている。
まさかいきなりこれはないだろう。
すると奥に見えているクワッドと並行して動いている二人乗りリフトを使うのだろうか。
ハズレだった。
先生は子供たちを引き連れて、ハの字で滑らせたり、歩かせてみたり、ハの字とニの字を交互に滑らせたりしながら、スタート地点からずるずると下へ移動を始めた。
パパも私もゲレンデは上だとばかり思っていたが、クワッド乗り場の下にもゲレンデが続いていた。
それも超初心者向けのほとんど平らなコース。
後ろ向きになった先生が教えるとおり、レナが続き、その後ろにカナ。
どこかで滑るのをやめて登ってくるのだろうと思ったら、どんどん遠くへ行ってしまう。
両手を広げてお星様のポーズで遠ざかっていく子供たちを後目に見ながら、元いたクワッド乗り場に戻ってゲレンデ見取り図を確認したら、下へ行くコースの先は銀嶺ゲレンデになっていた。
たぶん一番下まで行って、銀嶺ゲレンデのリフトで戻って来るに違いない。
それじゃあ、レッスン風景をつきっきりで見るのは不可能だ。
仕方なく、何をするでもなく待っていると、やがてパパが戻ってきた。
「あれ? カナとレナは?」
「このまま下へ行っちゃったよ」
「えっ! この下にもゲレンデがあったんだ。それに絶対最初は平地でレッスンしていると思ったのに」
残念でした。
「どうする?」
レッスンの終わる3時までずっとここで待っていても仕方ない。
子供たちが銀嶺ゲレンデのリフトで戻って来るとしてもまだ先のことだろう。
「部屋に戻って風呂でも入るかなぁ」
パパはよっぽど
和泉屋のお風呂が気に入っているらしい。