12.携帯アラーム騒動
夕食は、本来なら冬季は食堂で食べるようだが、今夜の泊まり客が他にいないということもあり、宴会室をボードで仕切った別室に案内してもらえた。
ヒーターで温めてある。テレビも置かれていた。
カナとレナはそれぞれパパとママの昔の携帯をおもちゃにしていて、もう電話もネットも繋がらないのだが、時計、アラーム、計算機、カメラ機能などが生きているため、ぴこぴこと鳴らしている。
「食事の時はしまいなさい」
「はぁい」
しぶしぶ閉じるが、特にカナが使っている携帯は「からくり時計」機能というのがあって、一時間ごとに音楽を鳴らす。鬱陶しくて仕方ない。
「それ、止められないの?」
「電源を切っておけば、からくり時計は鳴らないから」
卓上には大人用の食事が二膳、子供用が二膳。
決して豪華ではないが、甘エビの刺身などもついていて、値段を考えると十二分だ。
「ホント、ここいいなぁ」とパパ。
「また泊まりたいね」
「泊まろう泊まろう」
子供たちは自分たちの分を食べ終えるとさっさと部屋に戻ってしまったので、大人二人はのんびりテレビを見ながらしばらく飲んでいた。