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本栖湖・浩庵キャンプ場便り
*水着で過ごす湖畔の休日3*

6.冷たい源泉



 浴槽の底は板張りだった。
 足を入れてみると、予想したよりは冷たくなかったが、それでも湯と言うよりは水のように感じる。夏場でなかったら勇気がいるところだ。
 そろそろと肩までつかると、冷や冷やとしたぬるい湯が全身を包み込んだ。
 不思議な感触で、タオルを巻いていることがあまり気にならない。
 肌にしみ通るような気がする。
 気が付くと入浴客たちはめいめい連れ合いとおしゃべりなどしているので、あまり子供たちの声は気にならなかったが、そのかわりみんなじっと動かずにいるので、どうしてもうちの子供たちが少し動いただけで湯を揺らしてしまうのではないかと心配になる。
 ここは本当に興味本位で入るような場所ではないのだろう。

 しばらく入ってから、上の加熱浴槽にも行ってみた。
 周りに貼ってある注意書きにも交互に入ると良いと書かれている。
 加熱浴槽はまあ適温。
 赤錆び色に染まった岩の湯口があって、そこからは冷たい源泉が出ている。
 飲んでみると何とも言えないほのかな水の臭いと、硬さを感じる喉ごしだった。
 漏斗のようなものも置いてあって何をするものかと思えば、それで持ち込んだペットボトルに源泉を汲むことができるのだった。


古湯坊源泉舘別館神泉の脱衣所を出たところ
すぐ右手に加熱浴槽と洗い場があり、正面から左へ階段を下りていくと天然の源泉浴槽 こちらは加熱浴槽右端にペットボトルがいくつも見える。みんな源泉を汲んでいくのだ。
加熱浴槽の源泉湯口。赤く染まっている。漏斗も置いてある 源泉浴槽に降りる途中から正面の壁を見上げると神棚が


 もう一度、源泉浴槽に戻る。
 ほとんどの入浴客はさっきからまったく動かない。
 端の方に板を張っていない剥き出しの岩盤があるので、そちらへ移動してみた。
 この岩の浴槽は深いところは2mもあるらしい。板を張っていないところはもともと浅くなっているのだが、それでも板との境目あたりに足を入れてみたら、部分的に大人の首ぐらいまでくる深さだった。
 まさにこの岩の隙間から自然に湧いているのだと思うと感慨深い。
 人間が周りを囲い、床を張る前からここには大きな天然の浴槽があったのだ。
 二岐温泉大丸あすなろ荘の源泉浴槽を思い出した。
 こんな風なお風呂に入れると、本来の温泉とはどういうもので、どうあるべきか、いろいろと考えさせられる。
 無理矢理に千メートルも千五百メートルも掘削して、機械仕掛けで汲み上げる温泉と一緒にしてはいけないのだろう。



2-7.天然鉱泉水 信玄へ続く


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