時々車に追い越されながら坂道をどんどん下って、年季の入った建物の佐々木商店のところで落合橋を渡る。
カーブしながら坂道を降りると、すぐにスマートボールなどのレトロな店が並ぶ落合通り。
中島屋の前を通ると、ちょうどさっき店内で接客などしてくれたお兄さんが暖簾を外すところだった。
「店じまいですか?」
「ちょうど今入っているお客さんで今日の蕎麦が終わりそうなんで」
「
上の湯と
御夢想の湯に入ってきました。あとは
河原の湯に入って
たむらに帰ろうかと」
お兄さんはちょっと呆れたみたいだった。
「そんなに入ると疲れませんか?」
た、確かに・・・。
でも楽しいから疲れないよ。あとね、自宅のそばには四万温泉は無いからさぁ。せっかく来たら限られた時間にいろいろ入りたいの。
ふと携帯を見ると、パパからメールが届いていた。
『もうチェックイン済み。今どこ?』
そこで、『今最後のお風呂に向かってる』と返信する。
最後のお風呂は河原の湯だ。
もう落合通りを出たら目の前だ。
時間は既に2時38分。
観光客が入浴できる時間は3時までだから急がなくちゃ。
中島屋を出て上の湯に向かったのが12時半ごろだったのだから、湯めぐりに出てもう2時間以上が過ぎていることになる。
自分にはそんなに時間が過ぎた感覚はまるで無かった。