若井さんが帰っていった後、いよいよyuko_nekoさんたちが帰ることになった。
帰りに寄る温泉はどこがいいかなと、がっちゃんがガイドブックを捲っている。
yuko_nekoさんが、本当は機会があったら一緒に川口の和楽美の里に行きたかったねと残念そうに言う。
和楽美の里はyuko_nekoさんのお気に入り。プールもあって子どもたちも喜びそう。私も行きたいと思いつつ、まだその機会に恵まれていない。川口は松代への行きか帰りに寄るには方向が反対になるからだ。
「野沢もいいな・・・」とつぶやくがっちゃんに、思わず私は「野沢に行くなら百合居温泉は?」と提案していた。
「百合居はちょうどここから野沢温泉に抜ける途中にあるよ。仮設の小さな施設でアワアワなの」
仮設の一言にがっちゃんの目が輝く。
がっちゃんはこの手のレア温泉に目がないのだ。
「私が行ったときはボイラーの故障で入れなかったのよね。それに百合居に行く途中に田中温泉、宮野原温泉と、なかなか良さそうなところが点々とルート上に並んでいるのよ。本当は一緒に行きたかったけど、良かったら行ってみて」
百合居温泉に行く道は本当に判りづらい。
がっちゃんに行き方を書いたメモを渡した。
パパがふと思い出したように、「百合居温泉ってもしかしてホームセンターの裏にあったあそこ? そうしたらとてもトレーラーなんかじゃ行かれないよ。道が狭くて無理だって」と言い出した。
「そうかぁ・・・」
ちなみに百合居温泉みたいなマニアックな温泉をパパは苦手とする。
絶対いつか行きたいと思っているけど、パパと一緒に行くのは難しいかもと思っている。がっちゃんなら喜んで連れていってくれそうだけど。
「で、うちも今日はどこか温泉に入れるのかなぁ?」
期待薄と思いながらも私もつぶやいてみる。
「うん、温泉ぐらいなら行ってもいいよ」とパパ。
これから神奈川方面に帰っていくがっちゃんたちと違って、うちは行くとしても松之山止まり。もう昼過ぎだし、そんなに遠出はすまい。
もちろん松之山温泉は大好きだけど、日帰り系はほとんど行き尽くしたからな。正月2日目の夕方じゃ、まだ旅館系では良い顔をされないような気がするから
鷹の湯へ行くか、それともまだ行ったことがない湯田温泉渋海リバーサイドゆのしまでも行ってみるか・・・。
「ここはどうかな、
ゆきだるま温泉っていうのは?」とパパ。
えっ、ゆきだるま温泉!?
「地図のどの辺? ・・・あっ、ここならうちも一緒に寄ってもいいですよ」とがっちゃん。
「本当ー? 本当に? 本当にいいの?」と私。
このとき私の顔が千載一遇のチャンスと輝いたのにみんな気が付かなかったらしい。
「ゆきだるま温泉って言うとキューピットバレイでしょ? 本当に本当に本当にいいの?」
「いいよ」
「・・・遠いよ」と一応小声で。
「そんなに遠くないよ」と地図を見ながらパパもがっちゃんも肯く。
「
千手温泉より近いんじゃない? 30分もあれば行くんじゃないかしら」とyuko_nekoさんも言う。
いいのか? みんな。
本当にいいのか?
ゆきだるま温泉はかなり行きたいところだった。
でも5回のみらい滞在で一度も口にしなかったのは、直線距離では近く見えても、その実、とんでもなく遠いと思っていたからだ。
しかもキューピットバレイに至る道は地図で見てもくねくね。相当の悪路である可能性も否定できない。
おまけにこの辺りでは比較的大きなスキー場に隣接している。
スキー客で大混雑という可能性も大有りだ。
本当にみんな、いいのか?
といいつつも、下手なことを言うとせっかくのチャンスが泡と消えてしまうかもしれないので、反対は唱えなかった。
もちろん運転手たちは後でたっぷり後悔することになった。
ごめんね。
だから「本当にいいの?」って言ったじゃない。