1.鷹の湯へ行くなんて聞いてないぞ
この日は雨模様だった。
この辺りでは降れば雪だろうと思っていたので、窓の外にしとしとと雨が降っているのを見たときは驚いた。
今日はyuko_nekoさん一家が一足先に帰る日だ。
昨日パパが二階の部屋にテレビデオを運び込んだので、子供たちは部屋から出てこない。
三人で籠もって映画やアニメを見ているのだ。
朝食の卓には、何故か昨夜塩胡椒して焼かなかったステーキ。
あと目玉焼きと納豆。yuko_nekoさんがちゃっちゃと作ってくれた水菜と削り節の一品。
雨の降り出す少し前、子供たちはまたまた外で雪遊び、男連中は炬燵でテレビ。
なんとなく時間が過ぎていく。
お正月がこんな風に過ごせるということはかなり贅沢なことだ。
合間合間にがっちゃんとyuko_nekoさんは荷物を纏めてチェックアウトの準備をしていた。
長かったような、短かったような。
ちなみに我が家は2号館にもう一泊していく。
パパがまた朝から飲もうとしていたのでストップをかける。
「今日は
鷹の湯まで運転してもらうんだから飲んだら駄目」
「?」
昨日まではお出かけの時、いつもがっちゃんに運転してもらったからパパは好きなだけ飲めた。
でも今日はがっちゃんたちの帰る日だ。
みんなで松之山温泉に行って鷹の湯に入って、がっちゃんたちはそれから帰途につくけど、パパが飲んじゃったら私たちは松之山からここに帰って来られないじゃないか。
「いつ松之山温泉に行くなんて決まったんだよ」
「いつでもいいじゃん」
昨日、
ナステビュウと鷹の湯をはしごしようとして諦めて、その後yuko_nekoさんが「鷹の湯は絶対明日行こう」と言っていたので私はすっかりその気だった。
でも実はyuko_nekoさんたちももう一緒に鷹の湯に行くことは諦めていたらしい。
帰りがけに寄ろうと、清津峡方面353号線沿いの
ゆくら妻有の場所を聞いてきた。
「鷹の湯に行った後、帰りがけにはしごするの?」
「えっ、鷹の湯に行くの?」
話が錯綜している。
でもなんだかんだで結局みんなで鷹の湯に行くことは決まった。
ゆくら妻有もいい温泉でお勧めなんだけど、でもみんなで一緒に入れる温泉の方がきっと楽しい。
それからyuko_nekoさんたちの精算をしてもらおうと、ワカイ測量に電話を掛けたのだが、あいにく若井さんは留守のようだった。
電話を受けた奥様は、連絡しておきますと仰ったが、それから30分、1時間と待っても音沙汰がない。
仕方なくもう一度ダイヤルしてみたが、やはり奥様が電話口で困っていらっしゃるばかりだ。携帯電話の方も繋がらない。
もしかして1号館に行っているのかな。
あそこはここと違って、携帯の電波もよく届かない。
がっちゃんが2時には出ないと間に合わないと言うので、2時になったところで2号館を出ることにした。
yuko_nekoさんちの宿泊料は我が家がいったん預かることにした。
留守中にきっと若井さんがあらわれると思うので、玄関の戸に事情を記した張り紙をした。