13.苗場館
苗場館は旅館ではない。食堂だ。
ラーメンや定食が食べられる小さな食堂が日帰り温泉も経営している。
冬場は除雪に温泉を使ってしまうため、立ち寄りは受け付けていない。
一度訊ねて降られている。今回は二度目の訪問。
「すいません、お風呂をお願いしたいのですが」と問うと、中から奥さんが出てきて受け付けてくれた。
ちょっとくたびれた感じの店は微妙にB級感を漂わせている。
料金を払うと、奥さんは「こっちです」と案内してくれた。
お風呂は食堂の中ではなく、外側から回るようになっている。
何だか妙な感じ。
玄関が本当に民家の玄関。
日帰り温泉ではなく、知人の家にあがるときのような感じだ。
入って直ぐ手前が男湯。奥が女湯になっている。
階段や廊下も店と言うより誰かの家という感じだ。
パパと別れて女湯の方に進むと、正面に暖簾があり、くぐると突き当たりにいきなり脱衣棚。ドアが無いので唐突に感じる。
脱衣棚から右の階段を下りると内湯があって反対へ行くと露天風呂があるようだ。服を着る必要はないが、いったん体をふかないと移動できない。
ここに来た目的は洗うことだったので、まずは内湯に行く。
岩の湯口にタイルの浴槽で、洗い場など少し古びているがシャンプーやボディーソープの備え付けはあった。
カナは自分で洗っていたのでレナだけ洗ってやる。
お湯は無色透明で湯の花が少し。
いい感じにほんのりとしたゆで卵の臭い。
冬に入ったときはもう少し熱く濃いような気がしたが、さっき入ってきたばかりの
松之山兎口の翠の湯が猛烈に熱くて濃いお湯だったので、むしろ薄いくらいに感じる。
いやいや薄いわけがないのだが、これは比較の問題。
酢と塩をかけたゆで卵のような味も以前よりマイルドに感じる。
それより肌触りがこんなにすべすべしていたっけ。