14.あさりトマト釜飯はパエリアの味
「高速に乗る前に夕食も食べていこう」とパパが言った。
まもなく塩沢・石打IC。
「この前寄った、釜炊きめしや こめ太郎は?」
「あれって湯沢ICの方だっけ?」
「いや、塩沢・石打の方だと思う。確か日本海鮮魚センター魚野の里の手前だった」
「そうか、あのときは十日町経由だったんだ。今日は逆方向からアクセスしているから、ICを越して左側にあるはず」
だんだん場所を思い出してきた。
ファミレスのような看板だけど、ちょっと小洒落た釜飯屋。
すぐに見つけて駐車場に車を入れたら、入り口前の小さな池にアマガエルが沢山いて、吃驚して一斉に飛び跳ねた。
店内は空いていた。
私たちの他に家族連れが一組。
前から気になっていたあさりトマト釜飯を頼んでみることにした。あと帆立の釜飯も。
「旅の最後に美味しいものを食べられると、気持ちよく帰れるんだよな」とパパ。
しかし・・・
「痛~い」とカナがべそをかきはじめて、みんなのいい気分は吹き飛んでしまった。
足の甲にござ風の座布団の棘がささったらしい。
ものすごく浅くて、薄皮一枚の中にめりこんでいる。
普通なら抜いてしまえばそれで終わり。
ところがレナと違ってカナはこういうことにはやっかいだ。
恐怖のあまり抜かせないのだ。
しかも気になるので抜けるまでぐずぐず言い続ける。
予防接種なんかでも、恥も外聞もかなぐり捨て、病院内を逃げ回るような娘だ。
カナがぐずぐず言いながらも抜かせないのですっかりパパも渋面。
仕方がないので泣きそうになるカナを無理矢理抱きかかえ、ママが強引に外へ連れ出した。
そして、抵抗を押さえ込み、えいやっ・・・。
「・・・・」
痛くなかったでしょーが。
仏頂面の彼女を連れて店に戻ろうとしたとき、携帯電話が鳴った。
出てみたら、レナの連絡網だった。
やっぱり明日からの合宿保育は正式に中止が決定したという連絡だった。