1.夜明けの出発
目覚ましがわりにセットした携帯電話のアラームは、無情にも午前4時半に、場違いなハワイアン・ローラーコースター・ライドを底抜けに明るく流してくれた。
しばらく前からごほごほと風邪を患っているパパと、ここ数日胃を痛めている私は何とか布団から這い出し、荷物と子供たちを車に積み込んだ。
午前5時出発。
6時半、藤岡ジャンクションで関越道から上信越道に入る。
冬の朝はまだ闇夜のようだ。
年末渋滞のピークは明日だが、それでも車の量は普段よりかなり多い。
この時間に出ても、渋滞の先頭を走っているようだな、とパパ。
宿泊する松代町に真っ直ぐ行くなら、関越道を六日町で降りて253号線を行けばよい。
しかし、今回の震災で、上越新幹線や関越道もかなり被害を受けた。年末までに全て開通させると聞いたが、それでも今年の年末は、何時にも増して帰省客で関越道はかなり渋滞するだろう。
迂回するとしたら上信越道。
単に上信越道経由で行くのはあまりに遠回りだし、せっかくだからどこか温泉宿で一泊していこう。
そんなわけで今夜の
野沢温泉が決定した。
野沢もすんなり決まったわけではない。
最初は日本海側で考えていた。
お正月用の食材買い出しに柏崎まで行くことを検討したのだ。となると・・・ルート上の温泉は鵜の浜温泉。
でも鵜の浜温泉は予算オーバーだった。この時期の鵜の浜温泉は海老蟹食べ放題が売りなのだ。
さらにokiesさんの
私の温泉報告書の掲示板で遊び人の金さんとokiesさんに、柏崎から松代に南下するルートは冬は通れるかどうか判らないし、海産物なら柏崎まで出なくても新井の道の駅で新鮮なものが手に入ると伺い、妙高・赤倉方面で考えることにした。
妙高・・・
赤倉・・・・新赤倉・・・池ノ平・・・。
関温泉にはかなり惹かれるものもあったが、なかなか絞りきれなかった。燕温泉は我が家は冬は無理だ。
パパが野沢温泉にしようかと言った。
既に松代の貸し民家に4泊予約を入れているので、あまり予算は残っていないのだ。野沢なら宿が沢山あるので希望するところが見つかるかもしれない。
というわけで、またまた
トクー!トラベル
のお世話に。ここの良いところは、値段が格安なだけじゃなく、子供料金、添い寝幼児料金が明確になっているところだ。この辺は宿によってまちまちなので、個人で宿を検討するとき、ひとつずつ問い合わせて計算しなきゃならないのと比べるととても使いやすい。
野沢に決まってもまだ難航した。
年末年始のかきいれどき、割の合わない添い寝幼児など勘弁してくれというのか、続けて三軒、空きがあっても断られた。
ほとんど諦めかけていたとき四軒目でやっと決まった。
良かったよう。
これで一安心。
うっすらとシルエットを見せる妙義山を過ぎて、今日は雲に隠れて見えない浅間山を過ぎる。やがて粉雪がちらほらと見えてきて、いつの間にか道の両端にも雪が積もり始めた。
白い綿帽子を被った小さな集落の中心に、まばらな林と社が見えた。
鎮守の森。それは以前
スイスや英国を旅したときに、どこも集落の中心には必ず教会の十字架が見え、そこを中心に共同体が出来上がっていたことを思い出させた。