洞窟風呂はもう男湯にチェンジしていたので、私たちはさっきとは逆の右手の暖簾を潜った。
こちらの脱衣所も真新しい。何故か浴室への入り口が二つある。どちらから入っても同じなんだけど。
子どもたちの支度をさせていたら自分が一番最後になってしまった。
他にだれも浴室を使っている客はいないようだ。
洗い場には子どもたちが並んで髪を洗ったりしていた。yuko_nekoさんはもうお風呂の方に行ったらしい。
私も髪を洗い終えてみんなの後を追うと、ここも内風呂だけでなく露天風呂が付いていて、みんなそっちに入っていた。
「ねぇ、絶対この露天風呂とそこの内湯、泉質が違うよね」突如としてyuko_nekoさんが言う。
「えっ、本当?」
まず、露天風呂に入ってみる。ここはさっき夕方に入った隣の洞窟風呂から出る露天風呂に作りもお湯も似ている気がする。
白濁していてゆで卵の臭いと薬っぽい臭いがするが、昼間の
五色温泉ほどには強くない。肌触りはとてもきしきしとする。
次に内風呂に入ってみた。四角い木の浴槽だ。
まず入る前の段階で色の違いに気づく。この内風呂のお湯は薄墨色だ。
そして気のせいかと思われるほど僅かだが、湯面に油膜のようなものが浮いていた。
ゆっくり浸かって臭いを嗅ぐと、これはまた意外な臭いがした。
この辺りではどこへ行ってもゆで卵のような臭いやマッチのような臭いがすると思っていたが、これはまた、揮発するような強い油の臭い。ゆで卵のような臭いも混じっているけど油系の方が強い。うん、驚きだ。
肌触りはきしきしを通り越してぎしぎし言いそうだ。
ゆで卵温泉の中にいきなりこのお湯とは面白い。かなり気に入ったかも。
子どもたちはずっと露天風呂に入っていた。
この露天風呂は湯口が二本あって、片方は激熱、もう片方はぬるいお湯が出ている。
入る場所によっては時々ふいに熱湯が流れてくるので要注意だ。
温度は違うがどちらも臭いはよく似ている。両方ともゆで卵の臭いだ。
七味温泉の名前の由来は七本の源泉をミックスさせていることから。
この宿も複数の源泉をいろいろとミックスしているらしい。
単独の源泉の良さを味わうのも良いけれど、全部均一に、ではなく、拘りを持っていろいろな割合で混ぜてみるのもまた面白かろう。
山あいのこの宿は、すっかり流れてくる雲に包まれて今夜は月も見えないようだ。
川の流れる音だけがさわさわと夜風に乗って流れてくる。