慌てて後を追う。
露天風呂は深い緑に囲まれていて、一方だけ開けている方角に松川が流れているようだった。
お湯の色は灰色がかった白の濁り湯で、沈めた手足はほとんど見えない。
強いゆで卵のような臭いと何か薬品のような臭いが混ざっている。
それほど熱くはなく、ちょうど良いくらい。
ああ、ずっと東京でコンクリの建物ばかり見ていたから、こういう露天風呂に入るのは久しぶりだぁ。やっぱりどんなにお湯が良いだのなんだのと言っても、
都市部のセンター系日帰り温泉では心が癒されないよ。
「幸せだなー」
「幸せだねー」
yuko_nekoさんと二人でしみじみと湯に浸かる。
何かこう、肩に乗っていた重みがお湯の中に溶けていくようだ。
しばらく露天風呂を満喫した後、私たちは内湯にも入ってみることにした。
前に写真で見たことがある木の浴室が待っているはず。
移動中にyuko_nekoさんの携帯が鳴った。
どうやらトレーラーで留守番しているちび姫ちゃんからみたいだ。
何か話しているので先に建物の中に入った。
話が終わったyuko_nekoさんが続いて入ってくる。
「牛が来たんだって」
「え」
「なんかねぇー、牛がトレーラーの窓の近くまで来たんだって」
「そりゃ怖かっただろうねぇ」
まあドアは閉めてあるはずだし、いくらなんでも牛がトレーラーを倒したりはしないだろう。