21.土砂降りの中、山みず木へ
さてお風呂から上がって、それからがまた大変。
さっき露天風呂で雨が強くなってきて雷も聞こえていたけれど、辺りは
黒川荘の建物を一歩出るのも勇気が要るほどの土砂降りになっていた。
なんだこれ。前も見えないほどの雨。まさにバケツをひっくり返したような。
しかも例によって傘は小さ目の折り畳みがひとつだけ。
どうしようもないから相合傘ではみ出さないように縮こまって駐車場に急いだ。
こんな時は停めた駐車場まで遠いのが恨めしい。
お風呂上りだって言うのにさっぱりしたどころかずぶぬれ。
半泣きで小走り。
ようやく車の前まで着いて、でも傘を閉じながら車に乗るのも一苦労。
一瞬車のドアを開けただけで、車の窓の下についている窪みにはえらく雨水が溜まった。
時刻は2時過ぎで、まだ黒川温泉入浴手形もあと1軒分残っていたが、この天気なのでもう真っ直ぐ泊まる旅館
山みず木まで行ってしまうことにした。
黒川荘が温泉地の西に外れたところに位置しているとすれば、山みず木は東側に離れている。
東には山みず木の他にも数件の宿があるが、いこい旅館などが建っていた中心地と違ってそちら側は一軒一軒が比較的離れている。
何だか道はいかにも山の中といった雰囲気になってきて、対向車とすれ違うのもやっとのところもあった。
ふいに開けたと思うと、道の左側にまるで新興住宅地のように沢山の家が建設中の様子が見えた。
こんなところに沢山の民家を作るわけないし、これはもしかして・・
「山みず木の離れかぁ」
確かにそうだった。
翌日フロントで伺った話では10月にオープンする山みず木の貸別荘というか、離れとのこと。深山山荘という名で山みず木とはまた違った趣があるので今度はそちらに泊られてはいかがとにこやかに勧められた。