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◆◇草津温泉と渋温泉◇◆
真夏の外湯巡り

33.渋温泉第九湯(結願湯)渋大湯






 前に来た時、渋大湯は金属のにおいがしてオレンジ色だったと思った記憶がある。
 しかし浴室に入った途端に迫ってきた金気臭は記憶していたものよりずっと強烈だった。金属をごしごしとこすった時に立ち上るあのにおい。浴室全体に充満している。
 流石に日帰り観光客も受け入れているだけあって、浴室の規模は他の外湯よりずっと大きい。
 全体的に木でできている大きな浴槽を真ん中で仕切ってあるが、仕切りの板は高さが斜めになっていて、上澄みの一部が行き来できるようにしてある。

 当然湯口側が熱く、湯口から遠い方がぬるくなるはずだが、手を入れると両方変わらないくらいに熱く思えた。
 観光客と思われる先客が二人でせっせと水を入れている・・・が、いくら入れても熱いので諦めて場所を譲ってくれた。
 「ぬるくならないので入ってないけど上がります」
 あらら。





 緑がかったオレンジの濁り湯。
 色といいにおいといいとても主張が強く、他の外湯の繊細な違いが全部ふっとびそう。
 先客がぬるめてくれた水の蛇口の近くに身を浸す。ちょうど良いくらいに温度が下がっている。
 いつに間にか他の人はみんな上がってしまってお湯の流れる音だけがする。
 天井を眺めて、今何時だろうと思った。





 上がるときに入れ違いで若い女の子のグループががやがやと入ってきた。
 思った通り「熱ーい」「入れなーい」の合唱で可笑しくなる。
 下駄を履こうと思って気付いた。
 渋温泉の旅館は揃いの下駄を用意していて、浴衣姿でそれを履いていると渋温泉らしい気分が味わえるし、みんな同じなので外湯で履き間違えても宿の下駄はトータルで増減が無い仕組みだが、今入った子たちの下駄はデザインが違う。
 「渋温泉」とでかでかと書いてないし、鼻緒がもっと渋い色。よく見たら金具屋専用の下駄だった。


渋大湯の路地を入れば隣がひしや寅蔵




2-34お風呂が怖いへ続く


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