コートを羽織って早足で
千歳の湯へ。
夕方に
喜美の湯、夜中に千歳の湯と、昨日とラインナップが同じだ。
ざばっと入り、あたたまってざばっと出る。できるだけ急いで。
何だか嫌な予感がした。
息を切らせながら夜の通りを歩いて宿に戻り、玄関の戸を開けようとしたら・・・
げげっ。
鍵が掛かってる。
昨日、夜中にパパと二人で千歳の湯に行ったときはどうしたっけ。確か出るとき鍵を開けて入るとき締めたんだった。
今日は出るとき既に鍵が開いていた。誰か先に出ていた人が先に帰ってきて、鍵を締めてしまったんだ。
いや、焦らない焦らない。こんなときのために携帯電話があるのさ。
「・・・・・・・・・もしもし」
「なに?」と眠そうな声。
「起きてた?」
「起きてたよ」
「玄関閉め出されちゃった。降りてきて開けてくれない?」
「・・・・・・・・・・判った。しょうがないな」
パパがエレベーターで下りてくるまでの間、玄関前でポケットに手を突っ込んで待っていたら、後ろから手に袋を提げた男の人が近づいてきて、手に持った鍵を目の前のドアの鍵穴に差し込んだ。
「実は閉め出されちゃって・・・」
「駄目だよここはフロント10時までなんだから、それ以降に外出するときはちゃんと鍵持って出なくちゃ。あっ、俺、ここの常連だから」
彼が手に持っている鍵は、部屋の鍵のついたオレンジのバーだった。
バーには鍵がふたつぶら下がっている。
気が付かなかった。部屋の鍵には玄関の鍵も付いていたのか。
その男性が行ってしまった後、入れ違いにパパが降りてきた。
「あれ・・・?」
閉め出されているとばかり思っていた私が玄関の中にいるのを見て怪訝そうな顔。
うん、まあそのわけは部屋に戻りながら話すからさ。