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晩秋の草津旅行記

4.夜の喜美の湯










 喜美の湯は道から少し入った裏にひっそりと建っていた。
 6月に草津に来たとき、確かみんなで昼食を食べた店がこの近くで、食後にちらっと見に来た覚えがある。
 屋根が独特のカーブを持つ如何にも湯屋らしい佇まいで、もう既に辺りが暗いのでぽつりと屋根の下に灯りが灯っている。

 子どもたちは部屋で待っているので大人二人、身軽だった。
 草津の共同浴場は熱めの所が多いので、下手に子供を連れてくると難儀する。
 がらがらっとドアを開けて入ると、こぢんまりとした共同浴場だけどちゃんとトイレもついていた。
 地元の方とおぼしき年輩の女性が二人、脱衣所のベンチで世間話に興じている。
 挨拶を交わして誰もいない浴室へ。
 湯気の充満した空間に長方形の浴槽。縁が木だ。それも使い込まれて角が丸くなっている。こういうの、好きだなぁ。
 脱衣所との仕切りにあたるドアの辺りは作り替えたばかりらしく真新しいが、お風呂や天井は年季が入っている。
 共同浴場の中でも一番古い建物だった長寿の湯もこの秋に立て替えに入ったはずだ。こういう雰囲気もだんだん無くなっていくのかもしれない。
 浴槽の中はタイル貼り。緑がかった透明の湯。
 掛け湯するとやっぱり熱い。
 冷え切った足にじんじんと熱さを感じる。
 臭いはほとんどない。
 身を沈めると、ここが草津なんだとようやくしみじみと実感できた。
 入ってしまえば不思議と熱さは感じなくなっていた。







1-5狙い目は白旗の湯へ続く


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