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晩秋の草津旅行記

5.狙い目は白旗の湯










 夕御飯はパパ特製きりたんぽ鍋。
 今日は朝から丁寧に出汁を出して、具材も既に刻んである。
 鍋にかけてぐつぐつ煮れば出来上がり。
 ご飯だけはだださんたちに準備してもらった。
 ところで草津には「もくべえ」と「はりや」というスーパーがあったが、先日あまり評判の良くなかったはりやが撤退し、新たに「大津」というスーパーができたところらしい。
 「今日がオープニングセールだったんだ」と晶ちゃんが教えてくれた。
 草津はまあ山の中だし、観光地でもあるから、群馬の平野部の街なんかと比較すると、どうしても価格設定が高めになるそうだ。

 子どもたちはこの建物のお風呂に入れて、夜の9時過ぎには寝かせた。
 もうニンテンドーDSを手に入れて以来、どこへ行くにもDSと一緒だ。
 たまごっちの支配期が終わったと思えば、より強力なDSの支配下に捕らわれてしまった。
 今回は他に子連れの参加者がいないから、ひたすら二人で部屋に籠もってゲームを続けていた。
 こうなることは判っていたが、これも時代の流れっていうものかしら。嘆かわしい。

夕食の風景



 何の話のついでだったか、晶ちゃんが「平日夜の白旗の湯は狙い目ですよ」と教えてくれた。
 白旗の湯は湯畑の一番目立つ辺りにある草津でも最も有名な共同浴場だ。
 源頼朝が発見したとされ、由緒正しい上に真っ白に白濁して観光客受けする湯質だ。
 だからいつ行っても混雑している。
 いや、私が入ったのは一度きりだが、湯畑に行くと目に付くからその度に目をやるだけで、次から次へと絶えることなくお客さんが出たり入ったりしているのが判るし、入り口前のベンチにはいつも連れあいを待つ湯上がりの客が人待ち顔で座っている。
 それを見ただけで混雑ぶりが判るというもの。
 一度きり入ったのは、2年前の冷たい雨の降る夕方。
 大混雑の脱衣所などお湯と雨水とでびしょびしょだった。
 もちろん浴槽も芋洗い。
 快適には程遠かった。
 だから次の機会があるなら、いつでもいいじゃなくて、ぜひとも空いているとき。そんな風に思っていた。
 今日は飛び石連休の合間の平日だから、混んでいるとも空いているとも何とも言えないけど、行ってみる価値はあるかもしれない。

 しかし白旗の湯は有名な共同浴場だけあって、悲しいかな必ずしもマナーの良い人ばかりではない。
 中には風呂場で夜中に酒を飲んで酔っぱらうような不届きな観光客もいたようで、ずいぶん前からここは夜中は立入禁止になっている。
 閉まるのは11時だから、その前には行かなくちゃと話していたのだが、おしゃべりに夢中になって、ふと気がつくと時計は10時40分を回っていた。
 「間に合うかな」
 「ぎりぎりかな」
 晶ちゃんは湯治中だから時間湯以外の温泉には入らないし、パパも既に浴衣に着替えて寝る準備万端だ。
 心細いけど一人で行く覚悟を決めていたところ、だださんが同行してくれることになった。
 最初は道案内をするだけと言っていたけど、やっぱりだださんも手にタオルを持っていた。



夜中の草津の湯畑への道




1-6白旗の湯へ続く


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