2.共同浴場と時間湯の違い
ランチは今日だけ参加のオリーブさんご夫妻もいらっしゃる予定。
10時にあさひ荘をチェックアウトして、居場所もないのでとりあえず昨日も集合した
大滝乃湯駐車場に車を移した。
「次の時間湯まで30分弱あるかな。ここからだと
煮川の湯が近いから行っちゃおうかな、どうしようかな・・・」
晶ちゃんから
時間湯をしている間は、他の源泉には入らない方がいいんだという話を聞いている。お湯同士が喧嘩して、効果が適切に上がらないとか。
「でも、よしかさんたちは体験時間湯だから気にしないで良いですよ。私も今はきちんと時間湯で週末湯治をしているけど、最初、体験をしてみた頃は気にせずいろんな源泉に入っていましたもの」と晶ちゃん。
そうですか。
それなら話は早い。
「パパ、ちょっくらそこにある共同浴場へ行って来てもいいかな」
「・・・どうぞ」
半分呆れられている気もするが、チャンスは逃さないことにした。
共同浴場煮川の湯は大滝乃湯の隣にある。
設備の整った大滝乃湯が入浴料800円で有るのに対し、浴槽一つの煮川の湯は無料開放されている。といっても観光客のために開放されているわけではない。地元の人や湯治の人も通っているのだ。マナーには特に気を使わねば。
源泉はどちらも煮川源泉。この源泉は旅館などに引かれていないので、大滝乃湯か煮川の湯でしか入ることができない。
日曜日の午前中。煮川の湯は結構混んでいた。
入り口に、ここは熱いので子連れはやめた方が良いといった張り紙がある。
なのに私の後ろからは小さな女の子の手を引いた観光客も入ってきた。
親子連れは入り口を入ったものの、やはり張り紙の文章が気になるのか脱衣所で躊躇している。
うーん、熱湯に馴れていないなら大滝乃湯が無難だと思うぞ。
私は前にも一度、煮川の湯に来たことがある。
皮が煮えるほど熱いから煮川と呼ばれると聞いていた割には温かった。
少なくとも熱湯だと思った
凪の湯に比べたら全然だった。
お湯の色も僅かに白濁していて、少々鈍り気味だったのかもしれない。
今日の煮川の湯は好調だった。
粉のような湯の花はわずかにあるものの無色透明でたぎっている。
湯船からもざぶざぶと溢れている。
しかし時間湯を体験した今となってはこのくらい恐るるに足らない。
そう思って掛け湯をしたけど、やっぱり熱いものは熱いや。
掛け湯は熱く感じたが、お湯の中に入るとさほど熱さを感じなかった。
やはり時間湯で熱湯慣れしているらしい。
熱い湯には長時間入るものではないと知ったので、適当に3分ぐらいで上がった。
そういえば時間湯の浴槽は体を伸ばし脇や膝の隙間を開けて入れるように深くなっていた。
この本当の意味がここでようやく分かった。
普通の浴槽である煮川の湯に入った今、いくら熱くても皮膚が赤くなっているのは表の面だけで、膝や腕など曲がっているところの内側はくっきりと白く残っている。
これではいけないのだ。
お湯をよく吸収すべき膚の一番柔らかいところに肝心の源泉は触れていないし、血行もよくなっていない。
体を曲げて入るこのお風呂では駄目なのだ。
それに自分が入っている間も他の人が出たり入ったりしてお湯を揺らす。
これも良くない。
いっせいに入り、いっせいに上がる時間湯の作法にはいろいろと深い意味があったのだ。