あさひ荘から住宅街の中の道を行くと、
長寿の湯はすぐだった。
木の板に墨で長寿乃湯と書かれた看板以外、飾り気がない。
どちらかというと古い民家のようだ。
それもそのはず、草津に18ある無料開放されている外湯の中では、一番古い建物になる。昭和51年建設だ。
外観は素っ気なかったが、中は木組みに年季が入っていてなかなか良い雰囲気。
場所柄、観光客の利用はほとんどなく、地元の方が大半のようだ。それも年輩の方が多い。
お湯は熱めだが熱すぎるほどではない。緑色っぽく見える透明のお湯だ。
これから時間湯をするのだしと思って、あまり長湯はせずに上がることにした。
脱衣所で服を着ていると、「共同浴場巡りをしているの?」と地元に方に話しかけられた。
たぶん観光協会の地図に載っている
白旗の湯、
千代の湯、
地蔵の湯などと違って、入り組んだ所にある長寿の湯を訪ねてくる観光客はほとんどいないに違いない。
「あっ、はい・・・」
「どことどこを廻ったの?」
「えーと・・・」
答えを待たずにどんどん話が進んでいく。
「ここはいいでしょ。他の共同浴場より雰囲気がいいと思うわ。他ではやれどっから来たの?だの、どこに泊まってるの?だのいろいろ聞かれて煩いでしょ」
「それはあなたでしょ」と他の人が混ぜっ返す。
何だか漫才みたいだ。
「でもね、この長寿の湯ももうじき建て替えなのよ。夏に草津のお祭りがあるんだけど、それが終わったら新しい建物に変わっちゃうのね」
するとこの良い色に染まった浴室の木の床などもあと何ヶ月かで見納めなのか。
「またおいでなさいね」
何となくこういう交流が嬉しくて、地元の方が多い共同浴場など廻ってしまうのかもしれない。
外に出ると、すぐにだださんと義満さんも上がってきた。
だださんは長寿の湯から道の先を指して、近くに「どんぐり」という有名なレストランや、まこと商店という良い総菜屋があるんだと教えてくれた。