16.ここは何処の湯?
私が土砂降りの雨の中、念願の共同浴場巡りを決行している間、パパは子供たちと
ナウリゾートホテルの室内プールに行っていた。
ほとんど貸切状態だったとかで、3メートルの深さがある飛び込み用プールを子供たちはいたく気に入ったそうだ。
・・・キミタチ、1メートルでも足がつかないだろうに・・・。
夜もきのこ鍋。
夜はきのこだけじゃなくて肉類も入れた。
きのこがほしくて行く道々、直売所などで捜したが、まだきのこの季節にはちょっと早いらしくてほとんど売っていなかった。
宝川温泉などに寄った去年の秋の榛名湖旅行では道ばたで色とりどりのきのこを売っていたが、確かあれは11月初めだった。
そのかわり松茸だけは今がシーズン。あちこちで売っている。
ちょうど昨夜、一郷一会メンバーは松茸を囲んで信州の温泉宿にいたはずだから、行かれなかった腹いせにこちらも松茸を買って頭からかじろうかと思ったが、一本千円の値札を見て、貧乏性の自分はついに車から降りられなかったりした。
おなかがいっぱいになったら、子供たちは寝るのが早い。
あれだけプールで遊べば無理ないだろうとパパ。
空腹を温泉饅頭の試食で補いながら、共同浴場を六ヶ所巡ったと私が話すと、パパは「アホじゃないか」と笑いながらも「お見それしました」と言った。
いや本当に、最後の坂道は辛かったよ。
一番近い
凪の湯が熱かったと教えると、じゃあ凪の湯に入ってくると言いだした。
彼は熱い湯好きなのだ。
でも凪の湯は半端じゃなく判りにくいよ。
西の河原通りからラーメン屋や煎餅屋のある細い裏道に入るんだよ。
私が湯巡りに使った共同浴場を書き込んだ地図を貸してくれと言われた。
駄目だよ、これ、今から日記を書くのに使うんだから。
別の地図に凪の湯の場所を書き込んで渡した。
どうぞ行ってらっしゃい。
40分経過。
戻ってくるなり彼は私の使っていた地図を取りしげしげと眺めはじめた。
もしや・・・。
「入れた?」
「・・・入れたよ。地元の中学生ぐらいの男の子が入っててさ、毎日来るんだって言ってた。家にお風呂無いのか?って聞いたら、あるよ、温泉だって言ってた」
どこか温泉旅館の家の子かな。
「熱かった?」
「熱かったよ、でさぁ、入りながら、やっぱ凪の湯はいいなぁって言ったらその子がさ」
「うん」
「ここ、凪の湯じゃなくて
翁の湯ですけど、だって」
ずるり。
「おかしいと思ったんだよ、ラーメン屋とか煎餅屋なんて無いし、裏道じゃないところにあるし、何だよ、言ってることと全然違うじゃないかって思った。でも地図にあるホテルみゆきは側にあったから・・・あっ、こっちは別館じゃないか」と、今見た地図で指さす。
彼はしゃくなげ通りを下りきったところで西の河原通りに入らず真っ直ぐ進んでしまったのだ。
まあいいじゃない。凪の湯には入れなかったけど、翁の湯に入れたんだし。
草津にはホント、共同浴場がいっぱいある。