15.再び温泉饅頭
山本館とホテル一井の間を入って少し行くと、温泉街らしい狭い通り沿いに饅頭屋の灯りが見えた。
お、温泉饅頭~。
温泉饅頭を食べないともう一歩も歩けない。
よろよろと引き寄せられるように店内に入った。
早速「どうぞ~」と饅頭を差し出される。やった。ここは一個まるまるだ。
もぐもぐ、ごっくん。最後の方は胸が詰まりそうになる。流石にお茶までは出なかった(どこまでも図々しい)。
さっきの、ちちやの方が甘みを押さえた品良い味だった。ここはむしろパワフルなあんこだ。甘みもこくがあって自己主張が強い。
「9個入り、下さい」
一個食べさせてもらったお礼にちゃんと買うのだ。お土産はこの温泉饅頭。
「この辺でタクシーなど拾えるところはありませんか?」
「この辺は流しのタクシーはいないのよ、電話して呼ぶか、バスターミナルまで行かないと」
バスターミナルまでわざわざ歩いてタクシーを拾うくらいなら、ナウリゾートまで歩いて帰った方がマシというものだろう。
「判りました。ありがとうございます」
「どちらにお泊まり?」
「
ナウリゾートホテル(の、隣の貸しマンション)」
店の女主はがんばってねと手を振ってくれた。
ちなみにこの饅頭屋の名前は富貴堂。