13.その5 煮川の湯
まあいいや。ここまで来たらもうひとつ行こう。
千代の湯の道を真っ直ぐ行って、北群馬信用金庫に突き当たったら右折、すぐつぎの曲がり角を道沿いに左へ入れば角のところに
煮川の湯があるはずだ。
流石に中心部から離れてきたので宿もまばらになってきた。正面にいかにも共同浴場といった建物が見えたが、看板の字が消えかけていて読めない。「大滝の湯→」と刻まれた大石が建物の真ん前に置かれていて、いかにも観光客は煮川の湯ではなく
大滝乃湯に行ってくれと言わんばかりだ。。
大滝乃湯は榛名湖通いを始めて最初に旅行記を書いたときに訪ねている(
榛名湖日記三日目参照)。煮川源泉はこの大滝乃湯と煮川の湯の二ヶ所でしか入れないと聞いている。子供の頃に家族旅行で来たのは別にすれば、自分にとっての草津温泉の印象はこの大滝乃湯で固まってしまったため、草津のお湯は白濁して硫黄臭が強いと思いこんでいた。しかし実際は白濁するお湯は草津の一部に過ぎなかったりする。
煮川の湯には先客が一名いらした。年輩のおばあちゃんで地元民のように堂に入った入り方をしている。でも荷物が本当にこの人に背負えるのかと思うくらい大きなナップザックで、もしかしたら常連湯治客といったような人なのかもしれない。
挨拶を交わして入ろうとしたら、ちょうど若い女の子二人連れが賑やかにおしゃべりしながらやってきた。狭い浴室を見て、うわぁとかきゃぁとか言っている。
皮が煮えるから煮川と聞いていたが、それほど熱くなかった。マイルドな方だ。
ここが一番ゆで卵のような硫黄の臭いを強く感じた。透明ではなくわずかに白っぽい濁りがあり、白いふわふわした細かな湯の花がひらひらと舞っている。酸っぱいが苦みも強い。
ここのお湯が一番気に入ったかもしれない。浴槽も角をまめるた木造りで、手触りがいいのだ。
どこか一ヶ所しか入れないと言われたら、再訪するならここかな。
脱衣所と浴室の間にガラスをはめ込んだ窓がついており、もしかしてこういうのが盗難事件防止に繋がるのかなと思った。