すがわらは、鳴子大橋の正面に立っている大型ではないが小奇麗な外観の旅館だ。
うっかりしていたが、ちょうどこの時間は10時ちょっと前で、チェックアウトのお客さんが沢山いて忙しい時間帯なのに立ち寄りをお願いしてしまった。にも関わらず、旅館すがわらでは非常に快くお風呂を貸してくださった。
貸切風呂でよろしいですか? 大きい方がいいですよね?と聞かれて、お勧めのお風呂が空いていればそれでお願いしますと伝えたら、一階の奥の左側の浴室に案内してくださった。こちらの旅館は貸切の家族風呂が四つもあるのだそうだ。
浴室は薄暗い。窓があるが、斜面に面していて光があまり入らないからだ。浴槽は石でかなり深い。足元には玉砂利が敷いてある。家族用貸切風呂としてはかなり大きいと思う。割りに古そうな浴室で、おそらく鳴子の宿にはこういう古びた感じの浴室が多いのではないだろうかと思われる。
カナもレナも今、お風呂に入ってきたばかりなので躊躇している。パパがさっさと入って行ったら、レナも入ると言ったが、カナは入らないと言う。あまりに私たち夫婦が温泉に連れまわすので、最近カナは続けざまに温泉に入ることを好まない。温泉が嫌いになったわけじゃないが、一日一箇所で十分と思っているのだ。まあ、そりゃあもっともだ。ごめんね、カナ。
でも脱衣所で一人で待っているのもやっぱり嫌らしく、しぶしぶ入ってきた。お湯に入るときも熱い熱いと騒ぐ。
ところが、いざ入ると今度は気に入ってしまったらしい。底の玉砂利を集めてはご満悦だ。
ここのお湯は最初は強いインパクトはない。
滝乃湯に入った後だと特にそう感じる。だけど少し入っていると実力がわかってくる。この温まり方は半端じゃない。すごいよ。全然熱くないのにちょっと入るともうのぼせてしまう。滝乃湯とは対照的だ。
それにしばらく入っていると肌がすべすべする。お湯の中ですべすべするのではなく、上がって乾く前の肌をなでると滑る感じ。肩から腕に掛けて面白いので何度もなでてしまう。
空腹のパパはすぐにギブアップして上がってしまったが、ここにはまった子供たちはさっぱり上がらない。貸切を良いことに出たり入ったり、入ったり出たりしながら足元の石で遊んでいる。
ここのお風呂は深い。レナは足がつかないくらいだ。入るところに大きな岩を入れてあるのでそこに入れるから良いのだが、深いのにはちゃんと理由があって、戦時中、疎開してきた子供たちを入浴させるのに、大勢子供がいるから次々と短時間で入れるために深く作られたらしい。そんな歴史がある温泉なのだ。