3.さよなら鳴子
ロビーに戻ると先に上がっていたパパが、屋代さんが来て下さったと教えてくれた。わざわざ私たちが鳴子を離れる前に足を運んでくださったのだ。
良いところを紹介してくださって本当にありがとうございました。
屋代さんは笑って鳴子にはまだまだ入りきれないほど沢山の良い温泉があるのですよと仰った。せっかく鳴子のそばまで来ながら、
滝乃湯と
すがわらしか入れなかったけれど、鳴子のお湯はパンチが効いていて、とてもとても気軽に梯子なんてできない。数をただ入るのではなく、幸せになるために温泉に入るのなら、鳴子を極めるには住み着かないととても無理だなとそのとき思った。少なくとも何泊かして、やっといくつか入れるというところだろうか。
私が入ってみたいなと思っていた、ゆさやも馬場温泉もお湯が熱いという。私はいいけど子供たちは喜ばないだろう。鳴子に泊まったら、子供たちをおいて一人で湯巡りをするかな、と不謹慎なことを言ってみた。
屋代さんに、またいつか鳴子を訪ねますねと別れのご挨拶をして鳴子を後にした。
屋代さんのサイト名は「
湯けむりの町」と言うが、古びた町のそこここで白い蒸気が立ち上っている。
たぶん明日も10年後も…鳴子はそんな町。