10.かんぽの宿十勝川
かんぽの宿十勝川はロビーに入ると右手に受付があり、宿泊だけでなく日帰り入浴も歓迎しているようでちゃっちゃと手続きをしてくれた。
浴室の暖簾は女湯は「美人の湯」だが、男湯は「モール泉」。
とにもかくにも十勝川温泉はひたすら「モール泉」であることをアピールしている。
お昼時なのでお風呂は誰もいなかった。
お湯はパッと見は黒っぽく思えるが透明感のある綺麗な紅茶色。浴室の窓は広く取られていて塀で囲われた庭がガラス越しに見えている。
露天風呂にも出てみた。
何となく不思議な雰囲気。温泉の浴室は洋風なところも多いが、露天風呂はほとんど和風の作りが圧倒的だ。
そんな中、昨日の
リフレもそうだったが、やはり北海道らしいというか、和風では無い露天風呂だった。
浴槽は石でできているが、ごつごつ感の無い丸い石を使っていて、目隠しにぎっしりと植えられている植木はみな針葉樹。
極めつけは露天風呂の隣に建つサウナ小屋だった。ログ(丸太)ではないものの板張りの三角屋根の建物は、本場フィンランド風とでも言うべきか、とにかく日本らしくない。
車に戻った時、パパはまだ電話中だった。
あっさり原因が特定できて治ると思っていただけに意外だった。
ちらりと私の方を見て取ると、パパは電話を切った。
「出発しよう。向こうから電話が掛かってくるはずだから、電話が鳴ったら出て」
どうやら難航しているらしい。
電話が鳴ったのはそれから20分ぐらい経ってからだった。
相手はキャンピングカーをレンタルしたドライブ社で、男性の声だった。いきなり対処法の話に入るのかと思ったら、向こうもパパから電話を受けた社内の人から簡単な説明を受けただけのようで、とにかくパパが電話に出ないと話が進まない。
パパは車を停められる場所を探して、それからまたこちらから電話した。
私は機械のことはさっぱりわからない。
パパは車内の電気が使えなくなっていった様子を説明して、あれやこれや思いつく原因の可能性を挙げているようだった。
そして電話の相手と相談しながら運転席の後ろの板を外して何やら色の付いたコードが何本もついているバッテリーのような箱をむき出しにした。
その間、私たちは他にすることも無いので昨日スーパーで買ったメロンを食べていた。