7.雪の積善館、雪の河原の湯
落合通りを出ると正面が日本最古の湯宿建築物として重要文化財に指定されている
積善館だ。雪をかぶった木造の宿を見ていると、まるで江戸時代に紛れ込んだようだ。
積善館と橋の間に
四万温泉バス停があり、飲泉所も備え付けてある。
そうだ、四万に来たのだから飲まなくちゃと思って口に含んでみると、淡い塩味でとても飲みやすい。レナは喜んで飲んでいたが、カナは尻込みして飲もうとしなかった。
萩橋の袂に、
河原の湯はある。
石を積み上げた不思議なつくりの建物で、ここも無料で入らせてもらえる。他の共同浴場より源泉に近く効能が高いと評判だ。
階段を下りて入り口のドアを開けると、狭い脱衣所。先客に若い女性が一名。ちょうど上がるところだった。
中島屋を出る前にトイレに誘ったのに行かなかったカナは、今になってトイレに行きたいと言い出す。
でもこの共同浴場にトイレは付いていないのよ。体を温めれば少し収まるから、出るまで我慢して、と言う。
カナをなだめている間に、自分で脱いだ4歳のレナは、さっさと浴室へ入っていく。
「ちゃんと流してから入るのよ」と声を掛けると、
「判ったー」と威勢の良い返事が返ってきた。