3.山口露天風呂での逡巡
車を降りると身を切るような寒さ。
半端ではない。昨日の万座なんか比べ物にならない。こんなにとんでもない寒さがあるだろうかというくらい寒い。
いつも寒さに強い子供たちが、数歩歩くと弱音を吐きだす。コートのフードをかぶせてやった。それでも寒いようと半泣きの顔。露天風呂への道がなんと遠く感じられたことか。
床屋の正面の細い道を行くと、すぐに緑色の橋に出る。もう対岸に
山口露天風呂は見えている。粉雪が舞うこの天気でも、数人の入浴客がいるようだ。
緑色の四万川を震えながら渡る。橋の上も凍っていてつるつると滑るが、川に転落しないよう、ちゃんと両側に金網が張ってあるので安心だ。
子供たちにはみんなで入れる温泉だよと言った。
温泉に入りすぎて、時々嫌だというカナだが、家族で入れる混浴は好きなのだ。
山口露天風呂は混浴でも脱衣所はちゃんと男女別にある。しかし脱衣所も簡易なもので寒さをしのげる感じではない。お風呂の方は屋根や部分的についたてこそついているが、本当に吹きさらしで寒そうだ。
パパは本気で入るの?とこちらを見ている。
なんならママだけ入ってくれば、とまで言う。
それはないでしょ。
ここに突っ立っているだけで雪だるまになりそう。もう手足の感覚もなくなっている。もしこれが9月の
川原毛大湯滝や昔、冬に行った栃木の
川治温泉共同浴場薬師の湯みたいにぬるくて体があまり温まらないお湯だった日には、入った後は今以上の地獄が待っている。
だけど四万のこのあたりのお湯は確か塩化物泉…温度さえ低すぎなければいけるのではないか…。