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奥秩父日記1-5


5.残念な温泉

 ところがこれが失敗だった。
 いやいや施設は綺麗だし、脱衣所にベビーベッドもあるし、休憩室はご丁寧にカラオケ付きとカラオケなしの両方を備えてある。隣にはキャンプ場と川なんかもあって、温泉の駐車場がいっぱいだったらキャンプ場の駐車場をお使い下さいと書いてあったり、夏なんかは川遊びついでに温泉なんて楽しみ方もできるらしい。

 だけど塩素臭いのよ。

 浴室に足を踏み入れたとたん、鼻を突くカルキの臭い。
 流石にこないだの坂下温泉糸桜里の湯ばんげみたいに塩素剤がそのまま沈めてあったりはしなかったけど、ちょっとあれがトラウマになっていたので、またか、という思いは否めなかった。

 中央に小さめの浴槽、外側に圧注浴もある大きな浴槽。他にサウナと水風呂、露天風呂がある。
 印象的なのはお湯の色。蛍光灯のせいなのか、蛍光がかった薄い黄緑色に見える。
 軽いにゅるにゅる感がある。

 もしかしたら露天風呂の方は掛け流しとかカルキ臭無しとかそういうのもあるかもと、露天に行けばこれまた内湯の倍は強いカルキ臭。
 本当はカルキのことなんか何度も書きたくないし、他に悪いところのあるお湯でも無いのだが、何というか、自分が入っていて楽しくない温泉だなと思った。残念だ。

 露天風呂は天気がよいのでその分気持ちが良かったが、東屋風の屋根がついた四角い作りは、取り立てて個性的でもなく、秩父地方最大サイズといっても大きさだって大したこと無い。囲われていて見晴らしが良いわけでもない。
 なかなか良いところを探すのも大変だ。

 最後に内湯の小さい浴槽に入ってみたら、ここが一番カルキ臭が薄かった。その分、何かしらの臭いが嗅ぎ分けられそうな気がしたが、どうしても何と言い切れない薄さだった。
 子どもたちもここはあまりお気に召さず、早々に上がることになった。
 湯上がり、肌はなかなかすべすべになっていたが、pH10.49と相当な高アルカリ泉であるにしては弱いかもしれない。


秩父湯元武甲温泉


やっぱり理由はどうあれ、入って楽しくない温泉は、自分にとって好きになれません。
回りくどい?

でも、そゆこと。

ちょっとカナシイ。


  ところでここは脱衣所から繋がったところにサンデッキというかテラス席のようなものがある。ベンチや自販機(ビールも売っている)があって、露天風呂がよく見える。裸でも服を着ても太陽の下で休めるちょっと変わったスペースになっている。
 子どもたちはここがいたく気に入って、冷水サーバの水をコップに入れて持っていっては、裸のままそこで涼んでいた。
 このスペースで好きな飲み物を飲んで水分補給してから、またお風呂にはいるなんて楽しみ方もあるんだろうな。
 返す返すもあのカルキ臭がもったいなくてならない。

 お風呂から上がったら、待っていたパパが「ここはよっぽど子どもたちが気に入ったの?」と聞いた。
「うん、お風呂じゃなくて、脱衣所のテラスがね」



1-6.十割蕎麦みやび庵へ続く


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