最初、水が冷た~いなんて言っていた二人だが、そのうち夢中で遊び始めた。
夜は飛行機の狭いエコノミー席に閉じこめられて身動きもとれなかったのを発散しているかのようだ。
よく見ると
ラグーンの端の方が少し砂地になっていて、これがもしかしてビーチの砂かぁと笑ってしまった。
さらにこのラグーン、水鳥が遊びに来る。プールだと思ってみると、子供が泳いでいる隣でカモメがばしゃばしゃと水浴びしているのが可笑しくなってしまう。
子どもたちが遊んでいる間、私はラグーンの周りをぐるりと歩いてみて、パパはベンチで一休み。機内の疲れを取るにはなかなかいい選択だった。
「・・・お腹空いた」
子供はパンを食べたけど、大人は食べてない。
「そこのマクドナルドで買ってくれば」とパパ。
ラグーンの向かいにはマクドナルドがある。このマクドナルド、四年前もお世話になった。
パンケーキとバーガーとオレンジジュースを買ってくる。本当はパパにコーヒーも頼まれたのだが、セットのコーヒーの他にオレンジジュースを単品で頼んだつもりが上手く伝わらなくて、袋を開けたら飲み物はオレンジジュースだけになっていた。
まあいいやとパパはラグーンの売店に買いに行った。ラグーンの更衣室の建物の隣にラグーンカフェという売店があるのだ。
大人だけで朝マックしていたら、カナがラグーンから上がってきた。
「寒いからもう上がる」
「ハンバーガーかパンケーキ、食べる?」
「いらない」
着替えたいと言うので更衣室に連れていって着替えさせたが、妹のレナの方はいっこうに上がる様子は無い。
水に浸かっているわけではなくて、砂で遊んでいる。しばらく砂遊びをしているのでもうすっかり体が乾いて寒くないようだ。
水際に砂を集めて島を作り、てっぺんに拾った鳥の羽を刺して何かせっせと飾り付けている。
レナが戻ってこないのでカナと二人で海とラグーンを隔てるボードウォークを歩いた。
さっき一人で一回りしたとき、ここから海をのぞいたら浅瀬に魚が沢山泳いでいるのが見えたのでこれをカナに見せようと思ったのだ。
「ほら、魚がいっぱい」
「ホントだ、細長い魚もいる」
水が透明なのでとてもよく見える。
レナにも見せてあげようと二人で呼んだ。
「レナーっ、魚がいっぱいいるよー、おいでー」
レナは自分の砂の島を作るのに夢中だったので、一度は行かないと言ったが、何度も私たちが呼ぶとようやく顔をあげた。
レナは水着姿のまま走ってきて、ボードウォークの手すりの下から海を覗き込んだ。背が低いので手すりの上からは見ることができないので。
「本当だ」
そしてそのまま立ち上がろうとして、勢いよく手すりの下の部分に頭をぶつけた。
「痛ーい!!」
・・・結構すごい音がした。
こりゃ痛かっただろう。
泣きながらラグーンを振り返ったレナはさらに信じられないものを見た。
今まで自分がせっせと時間をかけて作り上げた大切な砂の島を、揃いの帽子、揃いの青いラッシュガードを来た2、3歳ぐらいのオージーボーイズが満面の笑みで嬉しそうに破壊する瞬間だった。
ぎゃーっとレナは大声を上げて泣き出した。
「ひどいーっ、どうしてレナのお城を壊すのーっ」
わんわんとレナは泣き続けた。
幸い少し距離があったのでサングラスのパパに連れられたあどけないボーイズにはレナの泣き声は聞こえなかったと思う。
ビーチに作った砂の城が双子のベイビーギャング団に破壊されたといって誰も責められないけど、レナにとってはまさに泣きっ面に蜂だった。
あまりにレナが泣くので、姉のカナは手伝ってあげるからもう一度作ろうと誘いかけた。
二人は水辺から少し離れた砂に新しく城を築き始めた。
また中央に羽を刺して、周りに色違いの木の葉を並べて。
その間にパパは一人で買い出しに行くことにした。明日の朝はローズガムズで朝食ハンパーが出るはずだが、今夜の食材や明日の夜以降の食材が必要だ。たぶん
ケアンズ市内を離れて
テーブルランドに上ってしまえば、ローズガムズまでスーパーのあるような町を通らないような気がする。今のうちに最低限のものを買っておかないと。
私は子どもたちの監視役として残ることにして、パパは一人でウールワースまで出かけた。