ポートダグラス楽園日誌
「激走500キロ -サウス・アサートン・テーブルランド-」





5月28日(水)

 今日は遠出をするから早起きしなくちゃ。
 朝5時45分に目覚ましをかけた。パパは相変わらず時差ぼけ気味でさらに早く起きた。
 朝食も取らず、6時半前には車を出す。
 まずは4マイルビーチへ。
 昨日、パパが一人で見てきた日の出を、眠気眼をこすりつつみんなで見る。

 今日もいい天気だ。

 さて、今日の行き先は南アサートン高原。
 アサートン高原というと、レトロな鉄道やマーケットで有名なキュランダの印象が強いが、南部はケアンズからも遠いため、あまり日本ではメジャーではない。
 さらにその南には最近人気急上昇中のパロネラ・パークや、いくつもの滝、湖などが点在している。


 今朝のRex展望台。ここはケアンズ到着日にパラグライダーを見たところだ。
 ビーチへのラウンドアバウトをいくつも過ぎて、ケアンズに付く頃はちょうど通勤時間。渋滞というほどではないけれど、少し交通は混雑気味。町外れでまたも、オレンジ・フッテッド・スクラブフォウルを二羽発見。

 国道一号線ブルースハイウェイを南下し、ゴードンヴェイルの分岐でイニスフェル方面へ。

 ちょうど分岐するあたりで綺麗な三角形の山を見る。
 まさにその形の通り、ザ・ピラミッドというらしい。
 ポートダグラス-モスマンのあたりと同様、このあたりもずっとハイウェイに沿って線路が延びている。しかも本当に現役だろうか?という荒廃ぶりだ。埋まったり雑草が伸びていたりする。バーリーフーリー鉄道もそうなのだが、とてもたとえ一日一本でも鉄道が動いているとは思えない。サトウキビ運搬などのために季節的に運行するものなのだろうか。

 途中バビンダという小さな街があり、サトウキビ加工工場なのか、古ぼけた巨大な工場が煙を吐いている。
 ここで山側へ右折すると、ボウルダーズという場所がある。
 ホテルで手に入れたinfomate リビング・イン・ケアンズというフリーガイドブックに見所マークがつけられていたので、ちょっと曲がってみることにした。

 いきなりサトウキビ畑の縁に、大きな真っ青な孔雀発見。
 パパがみつけたのだが、野生?らしい。つがいで二羽もいる。
 写真を撮ろうと追いかけてもあまり真剣に逃げない。
 こんな派手な鳥がその辺の道端にいるのだからオーストラリアってすごい。

 道はゆっくりした上り坂で、上り詰めたところに木々に囲まれたキャンプ場があった。見晴らしが良いわけではない。誰もいなかったが、トイレがあったので子供たちを連れて行ったりしていたら、マイクロバスがやってきて、外人ばかりのツアー客がぞろぞろ降りてきた。ガイドが木を指差して何か説明している。
 きっとここには何か珍しいものがあるのだ。それが何か判らなかったのが残念だ。
(後で部屋に置いてあった室内専用ガイドブックでボールダーズの写真を見つけた。丸い不思議な形状の石が沢山ある川の写真だ。駐車場からすぐだったのか、しばらく歩かないと着かないところなのかは判らない)

 イニスフェルが近づくと、回りの景色もサトウキビ畑よりバナナ畑の方が目に付くようになる。このあたりからパロネラ・パークの表示が出てくるので判りやすい。
パロネラパーク入り口

 パロネラ・パークはスペインからの移民ホセ・パロネラが1929年から1935年に掛けて作り上げたもので、メナ・クリーク沿いの広い敷地に、コンクリート製の城、庭、滝などがある。
 ホセ・パロネラはサトウキビ農場を購入、改築、売却といった仕事で成功し、パークを作り上げた。パロネラ・パークは社交場となり、繁栄を築き上げたが、度々洪水がパークを襲い、その度に修復がなされてきた。
 今、パークの建造物は、蔦が絡まりところどころ崩れて、不思議な景観を作り出している。
 日本では宮崎駿の「天空の城ラピュタ」のモデルのようだと聞いて訪れる人が多いようだ。
パーク入り口の真っ黒な子犬

 入り口では黒い子犬が出迎えてくれた。愛嬌があって可愛い。

 このパークはガイドつきで回るのが一般的らしいが、あいにく英語ガイドしかいないとのこと。日本語の説明書はあるので、それだけもらって自由に回らせてもらうことにした。

 …そう、このときはまだ、この蔦の絡まる古城で、世にも恐ろしい出来事が待ち受けているとはまさか思わなかったのである。

 小道を下っていくとすぐに有名なThe Casteleが見えてくる。
 椰子の生い茂る中にたたずむ、時間を止めたような美しい廃墟。
パロネラパークのキャッスル

 見上げると、大きさはそれほどでもないが、ホセ・パロネラがこの地にこんな夢のような庭を作り上げたいと願った当時の様子が偲ばれるようだ。
 中にも入れるようだが、右手に回ってみよう。下へ降りる階段が続いている。階段にも植物が絡みついている。

メナクリーク滝
パロネラパークのティーガーデン

 城の裏手に回ると、メナ・クリークの滝が見えるベンチがある。ベンチも苔むしている。
 この滝の上には釣り橋がかかっており、滝の下にはクイーンズランド州で最初の水力発電所が作られたそうだ。パーク内の電力を賄うためのものだが、個人のものとしては当時は目を見張ることではなかっただろうか。
 この滝の前の湖は泳げるらしいが、水は濁った緑色で、とても入る気になれるものではない。

 さらに奥へ進むと、リフレッシュメント・ルームズがある。
 この建物も、キャッスルに負けず美しい。
パロネラパークの軽食堂

 当時は毎夜ここでパーティなどが行われていた。
 今は蔦と椰子が茂るばかりだ。
 ここを抜けると庭がある。左右対称の朽ちた噴水があり、今も動かされている。
 リフレッシュメント・ルームズも中に入ることができる。中にはパロネラ家所縁の品々が展示されているらしいが、私たちは入らなかった。
 噴水の奥は広いスペースになっていて、テニスコートだったそうだ。コートの周囲にそびえる木々に黒いものが沢山ぶらさがっているのをパパが見つけた。コウモリだ。
 古城にコウモリとはなんと似つかわしいことか。

 コートの左手の道を行くと、トンネルの入り口に出る。
 丘を掘って滝のある泉への近道を作ったものだ。
 入り口の建物とその細工は素晴らしいものだが、トンネルを覗き込むととてもその奥に行こうという気にはなれない。
 コウモリの巣もあるらしいのだが、灯り一つ無く四角く伸びている暗く狭い通路は、明るい昼間でも絶対に何か出そうだ。
 のぞいただけで背筋が寒くなった。

 さて、ここの入場料を払ったら、魚の餌をくれた。パークの最奥に餌やりのできる場所があるらしいのだ。子供たちは古城よりフィーディングだから、そこへ急ぐことにする。
 しばらく行くと急に日本風の景観になる。細い竹林なのだ。おそらく東洋風の小道をイメージして竹を植えたのだろう。
 この辺りで蚊がまとわり付いてきたので足を速めた。早く竹林を抜けよう。
 角を曲がったところで、オーストラリア人らしい大柄な一行とすれ違った。
 子供たちを見ると、この奥にビッグ・フィッシュがいるよと両手で大きさを教えてくれた。そこまで行けば蚊の襲来を避けられるだろうか…。

 小道を抜けた。クリーク沿いの餌やり場だ。
 子供たちは嬉々として餌を撒き始める。水は濁っていて何がいるのかよく判らない。木々が生い茂っていて鬱蒼としている。
「本当に魚がいるのかな?」
 と、ざばっと魚のような妙なものが顔を出した。なんとナマズだ。ここはナマズが餌を食べに来るのだ。
 なにやら足がちくちくする。
 振り返って、思わず悲鳴をあげた。
 家族全員の体に、処かまわず蚊が群がっているのだ。
 ぎゃーっ撤収撤収ーっ。

 入り口のティールームまで戻ってきた。
 一番激しい攻撃を受けたパパは、足だけで85箇所も刺されていた。

 ここで一休み。遅い朝食にする。子供たちはフローズン・ストロベリーを見つけて食事よりそっちへ。大人はサンドイッチ。

 パパにパロネラパーク、どうだった? と聞くと、お前は250キロも走らせて人を蚊の餌にしたと散々なコメント。
 フィッシュ・フィーディングではなく、モスキート・フィーディングになってしまった。
 教訓。これからパロネラパークに向かう人は、モスキート・アタックに要注意。虫除けスプレーを全身に浴びてから注意深く探索に向かうこと。

 次の目的地はミラミラだ。
 パロネラパークからイニスフェルまで戻らずにパーマーストン・ハイウェイに出る道もあるようなのだが、分岐がよく判らず、一度イニスフェルまで戻った。ここから高原に向けてゆっくりと高度を上げていく。

 景色が変わってきた。
 緑の濃淡のパッチワークみたいになってきた。連なる丘陵地帯にときおり牛や馬が放牧されている様子は、ちょうどイギリスの湖水地方あたりの景観に似ている。
 大きな木にびっしりと赤い花が揺られている。何の花だろう。

 表示にしたがって横道に入ると、すぐにミラミラ滝
 この辺りにはいくつも美しい滝が点在し、その中でも最も有名なのがこのミラミラ滝だ。
(ミラミラ滝の動画はこちらへ 別窓で開きます)

 南国らしい植物に囲まれた幅の広い美しい滝だ。
 ここの滝つぼでも泳げるらしいが、水は冷たくてとても入る気にはなれない。
 ひらひらと青い蝶が飛んできた。ディンツリーアレクサンドラでも見たユリシーズだ。

 私はとても綺麗だと思ったけれど、パパは日本ではこのくらいでは名爆に入らないよと辛口。
 険しい山があれば滝は珍しくない。イギリスでもそうだったが、ゆるやかな起伏しかない丘陵地帯では、小さくても滝そのものがルック・ポイントになるのだ。

 滝を後にして24号線へ曲がると、次はミラミラ・ルックアウト

 ここからの景色だけはパパも認めた。
 アサートン・テーブルランド一帯が見渡せる。
 どこまでも丘が連なり、空が広い。素晴らしい開放感。それにしても遠い道のりだった。


 カナとレナはまたも晴れ乞い踊りを踊ってくれた。今日もいい天気だった。明日も頼むね。
 誰かがおいていったサトウキビが一本落ちていた。ぼきりと折って舐めてみる。
 どこまでも続く大地。この国は広いね。

 アサートン・テーブルランドには他にもカーテンフィグツリーグラナイトゴージなど見所が沢山あるが、実はまだ後日にツアーで北部は回ることになっているので今日はここまで。
 このままマリーバ、キュランダを経由して帰ろう。

 カンガルー注意の標識は一般的だし、カソワリー注意もディンツリー方面でいっぱい見かけた。
 でも木登りカンガルー注意の標識は初めて見た。

 ミラミラからアサートンへ向かう途中に、クレーター跡という見所がある。どうせ通るのだから見たいと思ったが、後部座席の子供たちの相手をしているうちに通り過ぎてしまったらしい。
 どこだったんだろう…。クレーターってどんなものだったんだろう…。今でも気になって仕方ない。
(バリン湖イーカム湖などこの辺りの湖はクレーター・レイクスと呼ばれる。もしかしたら湖の底が抜けたようなものがあったのだろうか)

 アサートンはこの辺りではすこし大きな町だ。もちろんケアンズなどよりはずっと小さいが。
 テーブルランドもこの辺りまで来ると、またまた景色が変わってくる。乾燥して大地がところどころ赤くむき出しになり、巨大な蟻塚が沢山見える。
 子供たちがマクドナルドの看板を見つけた。

 アサートンはさっと通り過ぎようと思っていたが、カナがどうしてもマクドナルドに入りたいという。休憩も兼ねて食事をしていくことにした。

 日本でもよく見る、遊具付きのマクドナルド。
 今日はずっと一日ドライブばかりで子供たちは退屈していた。ちょっと体を動かすのもいいかも。
 しかも二人ともトイレをがまんしていたらしい。マクドナルドに入って正解だった。
 マクドナルドの斜め前にスーパーマーケット、IGAアサートン店があったのでそこで買出しも済ませる。


 ケネディ・ハイウェイを下ると、ケアンズからの一日観光でも有名なキュランダに着く。レトロなキュランダ高原鉄道や、熱帯雨林の頭上を通るゴンドラ、スカイレールでアクセスするのが一般的だ。マーケットが開かれ、コアラや蝶、鳥を見られる小さなテーマパークが三つある。
 二度目のケアンズ訪問時に行きはスカイレール、帰りは鉄道を使い遊びに来たことがある。マーケットをぶらぶらし、バタフライ・サンクチュアリを見た。当時はキュランダ・コアラ・ガーデンズやバードワールド・キュランダはまだ無かった。
 今日は子供たちが喜ぶところにまったく寄らなかったので、コアラを見て帰ろうか。

 ところがテーマパークはのきなみ午後4時で閉園なのだった。現在4時10分。少し遅かったか。

 キュランダを出てから子供たちは競うように入眠した。
 朝も早かったし、ドライブの途中で寝てくれるかと思ったけど、結局眠ったのは本当に帰り道の後半だった。
 やっと車内も静かになる。

 キュランダからは九十九折の下り道が続く。
 車道からも、頭上を行くスカイレールのゴンドラが見える。
 ふいに開けた。
 ルックアウトがあり、ケアンズ近郊のビーチが見渡せるのだ。

 前にスカイレールに乗ったときは曇天で、眼下に生い茂る森は見えたけれど、他は灰色の空以外何も見えなかった。
 本当はこんな景色が見えたのだ。
 単にキュランダへ行く輸送機関だと思い込んでいたけど、晴れた日にスカイレールに乗ったら最高だろうな。今日はドライブで同じ景色を見られたのだから満足。


 マクドナルドのハッピーセット(右)と、スーパーで買ったスヌーピーのペットボトル、くまのプーさんの棒つきゼリー。

 本日の走行距離、およそ500キロ。パパ、お疲れ様。


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