ポートダグラス楽園日誌
「灯台のある白砂の島へのクルーズ -ロウ・アイルズ-」





5月27日(火)

 階下で物音が聞こえたので目が覚めてしまった。朝にしては暗いなと思ったら、まだ5時前で、時差ぼけのパパがパソコンの電源を切った音だった。彼はオーストラリアについて以来、夜は早く寝て、朝は日が昇る前に目覚めてしまうのだそうだ。日本と1時間しか時差が無いのに時差ぼけなんて変。

 子供たちはまだ寝ているので、パパは一人で散歩に出かけてしまった。
 4マイルビーチで日の出を見るのだそうだ。

 これが手土産の画像。他にも早起きの素人カメラマンが来ていて、「ビューティフル・サンラ~イズ」とか言ってせっせと撮影していたらしい。

 今日はロウ・アイルズへのクルーズをオプショナルツアーで申し込んであった。
 滞在中、一度は島へ渡りたいと思っていて、いろいろ候補を挙げていた。グリーン島はあまりにメジャーだし、フィッツロイ島という感じではない。フランクランド諸島のノーマンビー島はちょっと行ってみたいなと思ったが、ケアンズよりさらに南で、ポートダグラスからでは効率が悪い。
 とにかく白い砂に拘りたかったので、珊瑚礁でできたコーラルケイが良かった。ミコマス・ケイやウポル・ケイも考えたが、最終的に選んだのはロウ・アイルズだ。

 ここの良いところは、とにかくポートダグラスから近いこと。ケアンズ発のツアーもあるが、その場合もポートダグラスまでバスで一度出なくてはならない。バリアリーフの中では最も大陸に近いが、ちゃんとしたコーラルケイで、樹木の生えている島でもある。
 ロウ・アイルズとはその名の通り、低い島々で、一つの珊瑚礁の上に、二つの独立した島がある。大きい方はマングローブの生い茂る平たい無人島で、小さい方は中央に赤い帽子の白い灯台が建っている。
 クルーズ船は島の近くで停泊し、シャトルで灯台のある島とを行き来する。
 島は1世紀以上の長きに渡り、灯台守が住んでいたが、今は国立公園監視員の基地となっているそうだ。

 朝9時に、各ホテルにクイックシルバーの送迎バスが迎えに来る。出向するマリーナミラージュまで連れて行ってくれるのだ。
 ロウ・アイルズ行きの船は、ウィロウなど他にもいくつかあるが、クイックシルバーを選んだのは、高速カタマランで一気に島まで運んでくれるからだ。
 船酔い体質のパパは、クルーズ時間は少しでも短い方が良いに決まっている。

  ホテルから大型バスにかなりの人数が乗り込んだので、そんなに大掛かりなクルーズなのかと思ったら、我が家以外は全員マリーナでエイジンコートリーフ行きのカタマランに乗り込んだ。ロウ・アイルズだけでなく、クイックシルバーのクルーズに参加する全ての客を一気にマリーナに運んだらしい。
 エイジンコートリーフは初めてケアンズを訪れたときに行った。体験ダイビングもやった。とても綺麗な海だったが、ポンツーンと船上しかいる場所が無いので、海に入って遊ぶ時間のほかは、あまりくつろぐ場所などは無かった。

 出航前に船室でミーティングが行われる。スケジュールや注意事項の説明だ。ロウ・アイルズのクルーズは英語のみのツアーで、日本語のわかるスタッフなどは乗り込んでいない。簡単な日本語の説明書が渡されるのみだ。
 スノーケル用具の貸し出しと、グラスボトムボートによる珊瑚観賞、島内散策ツアーなどが無料で行われる。島への上陸はカタマランではなくシャトルで行い、ランチはカタマランに戻って、また最後のカタマラン行きのシャトルは3時半に島を離れる。

 エイジンコート行きのカタマランの方が先に出航した。
 大型の銀色に輝くクルーズ船で、船尾にはリーフ行きの客が鈴なりになっているのが見える。
 後を追うようにロウ・アイルズ行きも出発した。

港を出るクイックシルバーのウェーブダンサー

 ポートダグラスが徐々に遠ざかる。
 入り江を出ると、マストにするすると帆が張られた。風をはらんでぐうっと船が揺れる。
 このカタマランは帆船なのだ。
青空に帆を張る

 まあ、揺れること揺れること。
 なにしろこの船の名前は、ウェイブ・ダンサーと言う。
 もしかしてと振り返るとやっぱりパパは青ざめていた。過去何回か同じ目にあっているのに、酔い止めを飲まなかったらしい。あ~あ…。

 デッキは見ての通り、ほとんどワイヤーだけしか囲われていない。ワイヤーの下部も排水を考えてか5センチ程度しか段差が無い。後方などまったく段差が無くただワイヤーが張ってあるだけだ。
 はっきり言って、船の揺れでバランスを崩して転んだり、転がったりしたら、あっという間に海上に転落しそうだ。子供なんて簡単にワイヤーをすり抜けそうだ。それが波にあわせて、ぐうらぐうらと揺れるのだからたまらない(なんたってウェイブ・ダンサーだから…)。

 5歳のカナには自分で椅子にしっかりつかまるように言って、3歳のレナは絶えず大人二人で交代で支えていた。本人は自由になりたくて暴れるのだが、海に落ちるよりましだ。


 カナはクルーズがとても気に入ったらしい。最後は船首に行った。
 揺れる度に大喜び。ディズニーランドより楽しい!!

 ロウ・アイルズは大陸に近い島なので、出航して直ぐに遠くに見えていたが、それがだんだん近づいてきた。
 赤い帽子の灯台がトレードマークだ。
ロウ・アイルズ

 島の周りをゆっくりと一回り。それから停泊してスノーケル用具の使い方を説明された。
 各自、自分にあったマスクとスノーケル、フィンを選ぶのだが、カナも自分も自分もと言う。当然レナも。だが、用具はどれも大きく、せいぜいジュニアサイズぐらいまでしかなく、カナとレナにはとても使えない。
 それを予測して二人には水泳用ゴーグルを持ってきたのだが、カラフルなフィンを見たらつけてみたくなるのは当然だろう。
 なだめすかしているうちに、一番びりになってしまった。

 あわててシャトル乗り場に移動したが、グラスボトムボートはちょうど定員で断られてしまった。グラスボトムボートは午後にも出るというので、先にシャトルで島に上陸することにした。
ロウ・アイルズへの上陸

 海はどこまでも青く透明。砂浜は白…と言いたいがベージュ。
 けれどこの砂浜も泥ではなく、全て珊瑚と貝殻でできている。きっとコーラルケイの白い砂浜というのは、みんなこのくらいなのだろう。
 レナの腰ぐらいの深さでももう珊瑚がある。柔らかいソフトコーラルも多く、カナとレナは珊瑚は気持ち悪いので触りたくないと言う。
真っ青な空、真っ白な砂浜

 魚はいるけれど浅瀬にはそんなに多くない。
 スノーケルで少し深いところに行ってみたかったが、ママが遠くへ行くとそのたびに子供たちが怖がって泣くので、さっぱり行かれなかった。

 棒状の浮き具も貸してくれる。
 パパに引っ張ってもらってカナとレナはご満悦。
 海水は場所によってまったく水温が違い、温かい所ではぬるい位に感じられる。
 風は強い。波もかなりある。

 灯台のある島から見る無人島がまたとても絵になる。
 まさにこれがパラダイス。

 朝には少し出ていた雲もすっかり消えて、いつの間にか空も海と同じ青一色。

 ここは国立公園内なので、綺麗な貝殻を見つけても持ち帰ることはできない。
 貝殻を拾ってコレクションしたカナは、写真に撮って思い出だけ持ち帰ることにした。
珊瑚礁の貝たち


 ランチのためにシャトルでカタマランに戻る。
 パン、チキン、サラダ、パスタ、ボイルしたエビやフルーツが用意されている。なかなか美味しい。
クイックシルバーのランチ

 ランチの後は、ちょうど二度目のグラスボトムボートが出る。時間まで、まだあと数分あるとフルーツを食べていたら、ボートが出てしまった。
 待って!!
 声を掛けたら戻ってくれた。ビーチでのんびりするのも楽しいけど、珊瑚礁でスノーケルできないなら、せめてグラスボトムボートで見たいじゃない。
 最初からパパは乗らないと言っていたので、カナとレナを連れて三人で乗り込んだ。パパ曰く、グラスボートの類は、最も船酔いで気持ち悪くなるのだそうだ。

 夢中でグラスを覗き込むカナ。
 ウミガメがいたよ。縞々のサカナも。
 ボートではどうしても光が遮られるので、あまり珊瑚の色などはわからないが、このあたり、本当にいろいろな珊瑚があるのだ。ソフトコーラルがうにょうにょと動いている様子は、やっぱり子供たちには気持ち悪かったらしい。あんなに綺麗なのに。
 クルーズには、首も据わらないような赤ちゃんを連れて参加したお母さんもいて、彼女は午前中、島には上陸しなかったが、このグラスボトムボートには乗っていた。直射日光と海風に当たらないように、赤ちゃんは頭から全身タオル巻きにされていて、ほぎゃほぎゃと泣いていた。

 ボートはぐるぐると珊瑚の回りを回った後、島へついた。
 赤ちゃんのお母さんも島へ行くつもりではなかったらしく、ここで降りるの?とクルーに聞いていた。
 私たちも真っ直ぐ島へ戻るつもりじゃなかった。パパをカタマランに残したままだったから。頼んで、またリターンしてもらった。そしてまた、四人で島に渡り、残りの時間を過ごした。


 この珊瑚はスノーケルで撮ったものではない。
 歩いて海中を撮影したものだ。こんなに浅いところにも沢山珊瑚がある。
 というか、これより深いところに行くことを、カナとレナは許してくれなかった。ママやパパが遠いところへ行っちゃうのが怖いらしいのだ。


 子供たちは水遊び兼砂遊び。
 島はそういう意味でも、小さい子供でも楽しく遊べる。

椰子と灯台

 島の中心部まで歩いていってみた。
 ランドマークの灯台までは3分ぐらいだろうか。本当に小さな可愛らしい島なのだ。


 レナは木の実を拾ったよ。
 どこから流れてきたのかな。

 こんなに綺麗な場所があるんだね。そう言って、砂浜に腰を下ろして海を見ていた。
 何をするでもなく時間は過ぎて、いつの間にか最後のシャトルが島を離れる時間になった。
 カナとレナは赤い帽子の白い灯台にバイバイを言ったよ。
 「また来る?」とカナが聞いた。
 「来られたらいいね」

子供たちにちょっと聞いてみた
島はどうだった?
■カナ
 貝を拾ったのが楽しかった。
 あと、浮き具に乗ってパパに引っ張ってもらったこと。
■レナ
 船(グラスボトムボート)で縞々のサカナを見たこと。


 帰りのクルーズでは、パパは最初から船室にこもることにした。
 カナは船首に行きたいと言うので、レナも連れて行くことにした。
 出航して直ぐにクルーが来て、帰りはアップダウンも激しく、子供には危ないからと言って、サイドの椅子席に子供たちを移動させた。そこでも十分揺れる。
 いや、それから悲(喜)劇が待っていようとは予測だにしなかった。

 ところでカタマラン(二艘式)なので船首の真ん中部分は格子状になっている。その下は海だ。ひどく揺れると、ときおりそこから水飛沫が飛んでくる。ぱらぱらっとくるくらいなら問題ないのだが、いきなりそれはやってきた。

 ざぶーーーーん!!

 思いっきり頭から波をかぶってしまった。それも私たち三人だけ。
 たまたま水のはねた方向が私たちの座っているところだったから…。
 ぬれねずみ。
 あまりの惨状に、その場にいた全員が大笑い。
 風が強いからウィンドブレーカーを着せたことが不幸中の幸い、上半身の被害は最小限だったが、既に子供たちは水着を脱がせていたから、ズボンやパンツはびしょぬれだ。
 このままでは風邪を引くと、船室に下がった。
 青ざめてぐったりしているパパの横で、とりあえずタオルで子供たちを拭いてやる。流石に着替えは持ってきていなかった。
 ぬれていて気持ち悪い~と言うカナをなだめていたら、疲れきったレナが横になり、そのまま眠り込んでしまった。


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