子連れ家族のための温泉ポイント
- 温度★★☆☆☆ 泉質★★★★☆
- 設備★★☆☆☆ 雰囲気★★☆☆☆ 地元の人の利用が多い
子連れ家族のための温泉ポイント
子供が数人雪を投げて遊んでいた角で曲がると、すぐに右手に烏帽子の湯の看板が見えた。
比較的新しい緑の看板で、湯気の上がる温泉マークとともに「温泉浴場えぼしの湯」と書かれている。
特に古い家が並ぶわけでもないどこにでもありそうな住宅街にある烏帽子の湯だが、ドアを開けると昨日のかみのやま温泉の外湯にも共通するような昔からそのまま雰囲気を保っている渋い共同浴場の顔がのぞいた。
しかも入浴料はかみのやま温泉より安い100円だ。
到着した時が既に10時40分頃過ぎだったので入場制限をするまで20分を切っていて、番台に「入浴時間は11時半までになりますけど宜しいですか?」と聞かれた。
浴室のドアを開けてうわあっと幸せな気分になった。
ふんわりと甘いゆで卵の臭いがする。
これは予想していなかった。かみのやま温泉のように透明だろうから、勝手に臭いもないだろうと思い込んでいた。
まさかここで山の温泉的なゆで卵臭がかげるとは。
そうこれこれ。
今日入りたいなと思っていたのはまさにこんな感じの温泉。
烏帽子の湯は烏帽子の形の浴槽と湯めぐりマップには紹介されていて、実際にそこに載っている写真は男湯で歪んだ三角形が烏帽子に見えなくも無いが、実は女湯の浴槽は烏帽子には見えない。烏帽子の湯だから烏帽子型の浴槽と言うのは後から知ったことで、最初浴室に入って浴槽を見た時の私の感想は、「アメーバ?」だった。
非常に有機的なフォルムというか、角を丸めた長方形の四つの辺を全部適当な力でぐにゃっと押して出来たみたいな形。変わっている。
お湯はすっきりとした無色透明で湯の花も見当たらなかった。
熱めだが熱すぎず、でも長くは入っていられない感じ。軽いきしつきがあって、じんわりと包み込むようなお湯。
浴槽が掛け流しであるだけでなく、シャワー、カランも全部源泉を使ってある。
髪を洗いだした人のせいでシャンプーの臭いが充満し、いつの間にかゆで卵の臭いはわからなくなってしまった。
赤湯の外湯は撮影禁止だが、他にもえらく注意書きが多く、浴室は手鼻、ツバ吐き禁止、脱衣所はタオルを敷かず下着もつけずに生尻で椅子に座るの禁止と、まあ書いてあることは常識だがわざわざ貼紙をしてあるところが気になった。
入ったら即温まるタイプのお湯で、次の時間もあるのでそんなにゆっくりと入っていたわけでもないのだが、上がると随分体力を消耗していた。
上がって番台の前のベンチに腰を掛けて休んでいたら、番台の奥さんが出てきて出入り口のカーテンを閉め、「清掃のため、午前の受付は終了しました。午後2時までお待ちください」と書かれた札を下げた。
30分ずらして次はとわの湯がお昼休みに入ってしまうはずなので、さくさくと移動しよう。
さっき間違えた道を戻って国道に出て、駅とは反対の方角に歩く。この道も雪が残っている。
とわの湯は昭和18年に建てられた。名づけは町民からの募集で、この18という数字から18(とわ)となった。
ここは国道に面しているせいか建物はさっきの烏帽子の湯よりも大きく、ほんの数台停められるだけだが駐車場もついているようだった。丸い胴体の郵便ポストや電話ボックスがあるのがレトロ感を増している。
建物はもちろん決して新しくはなく、町の公衆浴場らしくいい感じに年季が入っている。
しかし烏帽子の湯周辺も、このとわの湯周辺も全然温泉街らしくない。本当に普通の住宅地の一角みたいだ。
とわの湯の周辺には温泉旅館も何軒かあるのだが、それでも景観は田舎の国道沿いそのままであまり観光地らしくない。浴衣で散策とかしたら絶対浮きそうだ。
とわの湯の浴槽はきっちりと正方形だった。
さっき烏帽子の湯でかいだようなゆで卵の臭いはせず、むしろ少し鼻を突くような刺激臭のようなものを感じる。
昨日のかみのやま温泉も、今日の赤湯も、どこも共同浴場は湯気が凄くて浴室内がミストサウナみたいになっていて、前がよく見えないし、時々ポタリと冷たい滴が落ちてきて思わずヤラレタと飛び上がりそうになる。
お湯はわずかにうす濁り。茶色の少し大きな湯の花がぽわっとところどころに漂っていた。
加水もあるものの掛け流しのお風呂は、浴槽の縁から円形のさざなみを作り贅沢に流れていく。
ここもあまり長湯はできない。
とにかく一湯ごとにどっと体力を取られる。疲れて歩けなくなる。
昨夜飲みすぎたせいではあるまい。