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湯西川温泉小旅行
*秘湯と米作り体験の旅*

8.謎の西川温泉



 さて、川治を出て次に向かうは西川温泉
 栃木の温泉に詳しい流れ星さんに、「温泉」と表示を出したら保健所からクレームがついたので「西川集会所」とのみ書かれていると教えてもらっていた。
 五十里ダムで作られた人工の五十里湖は、深いエメラルドグリーンで、ぐにゃぐにゃとしたY字型をしている。
 五十里湖に流れ込む湯西川沿いに西川地区はあるのだが、ここはまもなくダム湖の下に沈むことが決まっているという。
 野岩鉄道湯西川温泉駅を過ぎたところに上野という新しいトンネルができている。まだ一般開通はされていないが、工事車両が頻繁に行き来していた。
 トンネルの下に通じている現在の県道も水に沈むのだろう。
 その県道沿いにそれこそ知らない人は絶対に辿り着けないような西川温泉がひっそりと湯煙を上げていた。


工事中の新しいトンネル。ダムが出来たら今ある道は沈み、このトンネルが新しい道になるのだろう。
ちなみに西川温泉の新施設はこの辺りにできるらしい。 どーう見てもただの民家。
木の板に「西川集会所」。
どこに温泉が??


 一般民家のような建物で、外側には本当に「西川集会所」としか書かれていない。
 さっきお風呂に入ったばかりの子供たちは当然もう入らないと言う。
 一人で行かせてもらうことにした。
 恐る恐る玄関を開け、靴を脱ぐ。
 本当に中もただの民家のようだが、入って直ぐ目に付くところに「受付 料金500円」と更に手書きで「温泉浴場↑」と書かれていた。
 左手の襖が開いていて、中からテレビの音がする。
 「失礼しまーす」
 中でお茶菓子を摘みながらテレビを見ていたのは二人のおばちゃんだった。
 「温泉に入らせていただきたいのですが」
 「ああ、どうぞどうぞ」
 「ええと・・・」
 「ここは初めて? そこの廊下を真っ直ぐ行くとお風呂だから。女湯は奥ね。ゆっくり入っていってよ」


中に入っても温泉らしさは皆無。
隣の家におじゃましたような感覚・・・




1-9.集会所は沈んでも思い出は沈まないへ続く


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