3.饅頭屋で道を問う
鬼怒川温泉街の道は判りにくかった。
旧道とバイパスと二本並行して道が走っている単純なつくりなのだが、何故か二回もナビをはずれてしまった。
雲が低く、左手から正面にかけての山々が、雲の合間にうっすらと頭だけ出している。幻想的な景色だ。
しかしやっぱり梅雨時。一日こんな風にどんよりしているのだろうか。
名の通った鬼怒川温泉は大型旅館が多い。
一昔前なら社内旅行、宴会といったキーワードでもてはやされていたのだろう。
巨大なあさやホテルの横を通過しながら、私たちには縁がなさそうと思った。
鬼怒川温泉を過ぎて、さらに北上すると、次に賑わうのは景勝地龍王峡、そして
川治温泉に至る。
このあたり、鬼怒川と会津西街道こと国道121号線、そして東武鬼怒川線が束のようになって南北を貫いている。
首都圏から鉄道でもアクセスできるというのが鬼怒川流域温泉街の強みなのだ。
川治の温泉街に入り、中心部の表示板で
薬師の湯の場所はすぐに判ったものの、とても車は入れそうにない細い道だった。
温泉街にもとめられそうな場所はないし、仕方なく見つけた饅頭屋で駐車場の場所を伺うことにした。
店番の奥さんは上手く説明できず、奥にいる旦那さんを呼んできた。
にこにことした旦那さんは、温泉街を抜けて長生閣名月苑の奥を左折すれば薬師の湯の駐車場に出ると親切に教えてくれた。
「お子さん連れならあじさい公園を見ていくといいんだけど、時期的にまだあじさいは咲いてないかなぁ」
お礼に温泉饅頭をバラで二つ買った。
店の名は大黒屋まんじゅう店。