「・・・混んでるねー」
じりじりしながら、ちょうど塩山の辺りで夕方の渋滞に巻き込まれた私たち。
電車の高架が見える。何だかさっぱり車が進まない。
思えばさっきの
はやぶさ温泉までだって結構遠かった。山を下って盆地を越えて、反対側を笛吹川に沿って登らなくちゃならないんだものね。
その上私は
鼓川温泉の場所をよく知らなかったのだが、鼓川温泉ははやぶさ温泉よりさらに8キロぐらい奥まったところにあった。
何となく辺りが薄暗くなってきて、気分的に焦ってきた。もうちょっと近い場所で別の温泉に入るとか・・・あるいは来るのを諦めた方が良かったんだろうか。
「あと少しだから」
どんどん辺りは寂しい景色になり、まばらだった民家もついに見えなくなってきた。
道はいつのまにか上り坂。
「鼓川温泉はこの辺まで来るといつも来るんだよ。はやぶさ温泉みたいにぬるめで、ちょっと硫黄の臭いがするの。花かげの湯と鼓川は両方市営なんだよね」
夕闇が迫っている。
かなり上まで登ってきたなと思ったら、やけに立派な駐車場があってそこが鼓川温泉だった。
「ずいぶん時間が掛かっちゃったから、ゆっくりは入れそうにないね」